みなさん、業務お疲れ様です。今日は、知っておきたい薬物療法のさわりと看護についてお話をさせていただきたいと思っています。難しいところもあるかもしれませんが、できるだけわかりやすくお話ししたいと思いますので、リラックスして、気軽に聞いてください。 ①向精神薬と精神医学の歴史 日本において精神保健福祉法を立案しなければ行けなくなった理由を歴史から追ってみましょう。 精神障害者を保護するという歴史は飛鳥時代にさかのぼり、明治27年頃まで寺子屋的なものであったそうです。 M33~T8年まで私宅監禁の時代があり、公安から医療に替っていった時代でもありました。 T8年から、みなさんご存じの通り、呉氏の活躍で精神病院法が始まり、 S25年にはGHQの介入により精神衛生法が発足、 S39年ライシャワー事件により増床が進み、 S59年の宇都宮病院事件をきっかけに福祉が叫ばれるようになりました。 みなさん教科書で習っているのでこのへんはご存じかと思います。 では、これらの歴史と精神疾患患者数の変化に注目してみると・・・。 どうでしょう、GHQの介入後、精神疾患患者は激増していますね。 (このようなデータから、様々な推測が言われています。例えば、そもそも統合失調症のドーパミン分泌異常(モノアミン仮説)は仮説であり、実際に人の脳で調べたことはないので事実無根だという説、近代の精神医学は世界中で検査結果もなく過剰診断し、モノアミン仮説を口実にして人々に投薬しているという説、その結果として精神科患者が急増し問題視されてきたという説、戦中より現代の方がはるかに精神科患者が多い説、抗精神病薬も前頭葉を萎縮させロボトミーと同じ作用がある説、これらが優生学の思想から起こっていたという説などです。いきすぎた解釈はせず、まずは歴史を正しく認識していきましょう。) 元日本医師会会長の武見太郎は「精神科は牧畜産業だ」と発言していますが、それはどういう意味かを考えてみましょう。 牧畜って牛や羊を育てて最後肉にして食べられるようにする業者ですよね。 この牛や羊って何を意味しますか。患者ですね。彼等からみれば患者は牧場に放し飼いする牛か羊と同じという意味で、「精神科は牧畜産業だ」と日本医師会の会長が非難したんですね。 そして牧畜業者発言を有名にしたのが、精神科の最大の学会が発行する「日本精神神経学雑誌」1970年1月号の学会声明だったんですね。 (省略予定) 海外はどうでしょうか。 ブロイラーは昔のスイスの有名な精神科医。エミール・クレペリンの提唱した早発性痴呆の疾患概念を変え、精神分裂病(現・統合失調症という用語を定義しました。この用語が定義された後から、現在の統合失調長は治療の対象となりました。症候群であるものが単独の病気のようにイメージが独り歩きし、さまざまな偏見の原因になることから、現在その概念自体の再検討が必要とされています。 デイヴィッド・ヒーリーは、抗うつ薬の自殺への寄与、製薬会社と学術的な医学との間の利益相反、薬理学史など、現在150以上の査読論文、200以上の記事を出しているイギリスの有名な精神医学教授です。この医者が言うには、精神薬の問題は医者が常用させていることと言っています。海外では向精神薬の依存性が社会問題となり処方制限や単剤化の動きがみられるようになりました。確かに患者さんは幻聴が完全に消えるのではなく、気にならなくなる、と言いますね。風の咳止めシロップと同じで、症状を軽くし、治していないと考えると、それは一理あると思います。ですが、その結果社会復帰できるのであれば、患者さんは救われているとも言えるので、賛否両論です。 まとめると、海外では近代と現代で大きく考え方が変わってきていることが分かると思います。 では、海外と日本を比べてみましょう。 海外では単剤が主流ですが、日本ではまだカクテル処方が多いということですね。これよく聞く話ですね。 ベンゾジアゼピンに関してはどうでしょうか。海外では、ベンゾ系は、依存性の高さから、国際麻薬統制委員会で麻薬と指定され、実際、多くの国で処方日数の制限が行われています。はい、日本ではどうでしょうか。最近まで整形外科がデパスをキャンディのように自由に処方できていましたね。その弊害を考える必要がありますね。 また、国によっては持ち込みを禁止されており、荷物検査で没収されます。みなさん知ってますか?知ってた方?例えばですね、日本では睡眠導入剤として処方されることもあるフルニトラゼパムは、アメリカへの持ち込みは、量に関係なく一切禁止されていますよ。 はい、病床数はどうでしょうか。これもすべての国々と比較して日本は約3倍も多いです。日本がダントツで世界TOPなんですね。 これをみて皆さんはどう思いますか?簡単に言えば、日本は世界一番遅れているということですね。 一方、海外では政治的な抵抗者を精神疾患扱いして合法的に強制入院してきた歴史があるそうです。現在でもそれは行われています。 (ポーランド? ) 日本は海外に比べ遅れているが、日本だけじゃないということが分かりますね。 では、現代の精神医療をみてみましょう。 21世紀に入って、ほとんどの精神疾患が治らないとされています。ずっと薬を飲んで症状をおさえるしかないという考えですね。20世紀はどうでしょうか。ブロイラーがSCを定義する以前のころは、うつ病は全員治ると言われていたし、統合失調症もは7~8割は寛解・治癒すると言われていました。治っていたものが、治らなくなっていった、とも見てとれますね。はたして現代の精神医学は進歩しているのでしょうか。 現代の精神医学といえば、診断基準ですね 精神疾患と診断する基準は、DSMがあります。これは世界標準なので有名ですね。 しかしDSMは脳の病態からの分類ではないです。どういうことかといいますと、レントゲン検査も血液検査もなく、何も検査することなく、診断することを可能とする、診断基準、ということです。内科や外科では考えられないことですよね。 一方、脳の病態から精神疾患を診断する方法は存在します。それは、血液生化学検査(ペントシジンなど)、画像で脳血流の変化として観察し診断する検査(PET、fMRI、SPECTなど)ですが、残念ながらすべて確定的なものはなく、精度にも問題があります。遺伝子変異の可能性についても研究途上ですね。 薬物療法の根本的な部分をみてみましょう。 主診断←Drag 今はDSMによって何も考えずこっちに投薬することもある 副診断←Drag 本当は症状までみて投薬する必要がある これはどういうことかというと、世界中のあちこちでDSMによって誤った薬物療法を実践している可能性があるということですね。 いきなり一番伝えたい話をしますが、処方の根拠わかりますか?制疾患患者に向精神薬を処方する神経学的な根拠は、ほぼほぼモノアミン仮説です。みなさんどれくらい知っていますか?知っている人?はい、では、どうやって証明されたかわかりますか?実は証明されていません。検査したことがないんです。精神疾患にかかって、すでに服薬して、亡くなった人の脳の神経ホルモンの濃度を計測した研究はありますが、それじゃ証明できないんです。証明するには、服薬していない人の、生きた状態の脳を削ってホルモンの濃度を測らないといけないんですね。倫理的に難しいので、だから仮説なんですね。みなさん仮説を根拠として処方された薬を飲んでいるというわけですね。 はい。薬を飲み続けるとどうなるかわかりますか?もちろん依存します。神経に関する薬はすべて依存します。ステロイドや血圧の薬もそうですね。それをやめるとどうなりますか?禁断症状がでますね。精神科ではそれを病気が再燃した、といって投薬しますね。でも実は、病気じゃないんですね。ヘロインやめて禁断症状がでたからヘロイン供給して治った、ってだけなんですね。社会的問題を薬でどうにかしようとすると、依存という新しい問題が発生するんですね。ではどうすればいいんでしょうか。そこが私達の仕事だと思うんです。 さらに言えば、その診断すら間違ってしまうパターンもありますね。 統合失調症では、発症してからの抗精神病薬による治療が開始されるまでの期間が短ければ短いほど予後がよいと言われています。一方で、不適切な抗精神病薬の使用によりさまざまな精神症状が出現します。統合失調症と成人した発達障害の人たちは臨床の場でよく混同されています。発達障害と統合失調症では、抗精神病薬に対する反応が異なります。治療抵抗性の統合失調症を除き統合失調症は抗精神病薬への反応性がよいが、発達障害では抗精神病薬は大多数が無効なんですね。副作用によるさまざまな障害は、患者さんのQOLを低下させるだけでなく、時には命を奪うことにもなりかねない、ということですね。 抗精神病薬の副作用に、脳委縮がありますが、皆さんご存じありますか? 抗精神病薬自体に神経毒性があって、年に1%ずつ脳が委縮することが大規模研究で分かっているんですね。詳しくは2011/2月の「長期的な抗精神病薬の投与が脳を萎縮させる」という論文などを参照していただければと思いますが、、、脳の萎縮は病気による影響である、という認識が、じつは薬の副作用でした、というのは衝撃的ですね。症状を落ち着かせる為に仕方ないにしても、例えば若い患者に初めて投与を開始する場合など、脳委縮に関するインフォームドコンセントは、現代の精神医療で、はたして行われていますかね? 行われていないんですね。統合失調症は再発率がとても高い病気です。効果的な治療・再発防止のためには、継続した服薬が重要となってきます。長くお薬を飲んでいると、どうしても効果を感じにくくなってきます。必要なお薬だから飲んで下さい、と伝えるだけでは、なかなか飲み続けることは難しいと思います。 そこで、患者さんに正しくお薬を飲んでもらうために、自分が飲んでいるお薬の必要性を理解・納得して飲んでいただくことが必要なんですね。なので、副作用については基本的にはあまり触れません。説明の時にお渡しするお薬の説明書にも、眠くなる・立ちくらみがすることがある、など患者さんが不安にならないように配慮されています。副作用に関しては、何か体調に変化があれば、些細なことでもスタッフに伝えて下さい、とお伝えすることで対応しているんですね。だからインフォームドコンセントを完全には行えていない現状があるんです。みなさんはどう思いますか。 (このスライドは なし) 医療従事者の業務どうでしょうか。 医薬分業という言葉があります。医薬分業とは、薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師、薬剤師という専門家が分担して行うことを意味しています。 ヨーロッパでは800年近い歴史があり、神聖ローマ帝国のフリードリヒⅡ世(1194~1250年)が毒殺を怖れて、主治医の処方した薬を別の者にチェックさせたのが始まりと伝えられています。東洋ではそのような制度がなく、医者が薬を処方だけではなく調剤をしていました。日本が太平洋戦争に敗北後GHQによって、医薬分業が始まりました。 高度な専門性を向上させるため2006年より薬剤師の免許を取得するためには6年制課程の薬学部修了が必要となりました。 近代、現代の精神医療では、様々な概念モデルが提案されてきました。 みなさんは、どちらのモデルがしっくりきますか? 医学モデルでは、障害を、疾病という個人の問題としてとらえ、専門治療を必要とするものとみます。治癒あるいは個人のよりよい適応と行動変容を目標になされます。主な課題は、医療であり、政治的なレベルでは、保健ケア政策が主要な対応となります。 社会モデルでは、障害を、社会環境によって作り出された社会問題として捉え、社会が責任をもちます。障害は政治問題となり、社会変化が課題であり、目標になされます。政治的なレベルにおいては人権問題とされます。 一口で言えば、医者に任す→皆で考える、ということです。 WHOでは、ICIDH-2といい、2つの両極端のモデルの統合を提唱しています。 (省略予定) リカバリー志向という福祉モデルがあります。 リカバリー志向とは、一言でいえば、病や障害などで失ったものを回復し、人生をとりもどすことです。 非リカバリー志向は、感情の安定化が最大の関心ごとです。 特に大きな違いは、リカバリー志向は、リスクを冒すことを支援するんですね。どういうことかというと、失敗は成功の一部と考え、本人らしく人生を生きることを支援するということです。社会という受け皿にとっては、難しいことですが、私は、患者さんの魂を救うためには、この考え方が大事ではないかと思っています。 はい、向精神薬には離脱症状という問題があります。現在、日本国内では向精神薬の離脱症状に対する社会的な認知度の低さや漸減指導医不足により、向精神薬の減薬・断薬の際に適したサポートを受けられる体制が充分に整っていません。色々な患者さんを見てきましたけど、服薬者の、一部の方々は、大変な混乱の中に置かれていて、離脱者の中には、孤軍奮闘しているケースが多く、時には厳しい症状に耐えかね挫けそうになりながらも、ひたすら忍耐の一歩一歩を歩まれています。 こうした現況には何らかの警鐘が鳴らされるべきだと思いますし、離脱者の方々への専門的ケアとメンタルサポートの充実は急務だと私は思います。同時に、処方時、薬物療法終了時における副作用・離脱症状への説明は重要だと思いますね。  このへんが、服薬者の方々が健やかな日常生活へ戻れるかどうかの分岐点と言っても過言ではないと思います。 少しでも多くのスタッフの方々がこの時期の患者さんの立場に立ってち、丁寧な漸減指導・離脱症状緩和の方法が発展、周知される事を私は願っているわけですね。 まとまりに欠けていますが、以上で向精神薬と精神医学の歴史を終わります。現代の精神医療の問題点について、何か共感できるものなどはありましたでしょうか?お一人お一人がなにか問題点を感じていただければ幸いです。 ②5つの神経ホルモンと働き はい、薬の前に神経ホルモンの解説をしないと難しくなるので、簡単に解説していきますね。 まず神経ホルモンっていうのは何のことかといいますと、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン、アセチルコリン、ヒスタミン、の事ですね、よく聞くカタカナですね。体内には全部で50種類くらいホルモンがありますが、そのうちの代表的な神経に関するホルモンが、これですね。イメージ的には、野球ボールと思うとわかりやすいです。ドパミンは野球ボール、セロトニンはソフトボール、アセチルコリンはテニスボール・・・て感じで覚えてください。 図が出ましたね。これが神経ホルモンというボールですね。ボールをキャッチするにはグローブが必要ですね。それを受容体といいます。これが受容体です。グローブでキャッチしたら、手に振動が響きますよね。それを伝達といいます。 はい、これは、神経ホルモンが受容体にくっついたので、伝達作用を生じました、ということですね。 はい、じゃあ受容体に蓋をしたらどうなりますか。 蓋っていうのは向精神薬のことですね。蓋をすると当然ながら伝達が止まります。では次に、5つの受容体と作用について説明していきましょう。 ここにはドパミン受容体の作用が書かれています。Dっちゅうのがドーパミンっていう意味ですね。ドパミンにもいろんな受容体があって、D1からD4まで発見されています。この細かい分類をサブタイプと呼んでいます。長々と書かれていますが、要するに、サブタイプによって微妙に作用が違うんですね。精神科領域では、D2を狙っていることが多いですが。一言でいうと意欲に作用すると言われていますね。 セロトニンは5-HTと表記されていますが、5-ヒドロキシトリプタミンという物質だから略してこう表記するんですね。セロトニンは感情のコントロールに関係していて、特に注目するところは、抗不安作用と、不安作用、真逆の作用がサブタイプにあるんですね。それが作動するかで大きく作用が変わってしまうんですね。あと消化管に関与する受容体が多いのも特徴です。 アドレナリン受容体はですね、アルファ1から2、ベータ1から3までのサブタイプがありますが、精神科では交感神経亢進に関連しているa1を狙っていることが多いですね。アドレナリンは心臓に関係しているので、例えば心因性の浮腫がある人に、アドレナリンを遮断する精神薬をと投薬すると、浮腫が悪化したり、ST上昇をきたしたり、不整脈が出たり、最悪心停止を起こすリスクがありますね。 ヒスタミンはHと表記します。概日リズムと書かれていますが、覚醒の維持に関係している受容体と言われています。 ムスカリンは、Mと表記しますが、アセチルコリンやコリンとも呼ばれているので、認識をひとつにまとめる必要がありますね。抗コリン作用というのは、この受容体を遮断すると生じる作用、という意味ですね。消化管に関与する受容体が多いですね。 GABA受容体というものも存在しています。ベンゾジアゼピンはここに作用します。主な作用は、催眠、抗不安、筋弛緩ですね。睡眠薬を飲んだら足がふらつくのはこの作用ですね。 さきほどの5つのスライドをまとめると、このようになりますね。読み上げてみますね。・・・・ もっとざっくりとまとめると、こういうことですね。イメージできましたか? この図は、遮断したときと、賦活した時の作用をまとめています。遮断というのは、受容体に蓋をして伝達しないようにすること、賦活というのは神経ホルモンの濃度を増やして受容体にたくさんくっついてもらって、伝達を強めることですね。最終的にこの図が一番大事になるので、お手元にお配りしています。 読み上げてみますね。・・・・ さきほどの5つ以外もスライドで出しておきますね。 はい、これはですね、ドパミンは他のホルモンと互いに拮抗しあう関係である、ということを言っています。 ・ドパミンはノルアドレナリン、コリン、セロトニンと拮抗作用があります。 -ドパミンが上がるとアドレナリンが下がる。アドレナリンが下がるとドパミンが上がります。 -セロトニンをブロックすると、ドパミンの働きを高める作用があります。 -アセチルコリンはドパミンと互いに拮抗し合う物質です。一般的に、脳内のドパミン作用が弱くなっている状態ではアセチルコリンの作用が強くなっている。アセチルコリンの働きを抑える作用を抗コリン作用といって、この作用によってドパミンの作用を強めることができる。ビペリデンがそういう作用があります。/ 抗コリン作用により、脳内のドパミン作用を強め、パーキンソン病における手足の震えなどの症状、抗精神病薬などの投与によるパーキンソニズムの症状を改善する と言われています。 ・GABA--グルタミン(グルタミン酸-CO2=GABA)GABAが遮断されると相対的にドーパミンが増える。という関係もあります。 余談になりますが、動物が獲物を見ると追いかけますよね、あれはドパミンが大きく関与しているんです。じゃあ動物が敵をみつけたら、逃げますよね。あれはアドレナリンが大きく関与しているんですね、簡単に言うとそういうことですが、実際、交感神経や副交感神経がいろんなホルモンと関与していて、とても複雑です。複雑な神経バランスで人間は出来ている、ということです。1つでもシーソーのバランスを崩してしまうと、それを補おうと色々な症状がでるので、簡単にいじってはだめということなんですね。 【A】 抗精神病薬はα受容体遮断作用があり,アドレナリンのようにαおよびβ受容体刺激作用を併せ持つ薬物と併用すると,抗精神病薬のα受容体遮断作用によってβ2受容体刺激作用による末梢血管拡張作用が強調され,著しい血圧低下が起こることがあります。そのため,大多数の抗精神病薬の添付文書には,アドレナリンとの併用禁忌と記載されています。 一方,ノルアドレナリンは,αおよびβ1受容体刺激作用を有し,β2受容体刺激作用が弱く,敗血症ショック,心原性ショックに適応があります。実際の使用法に関しては,ノルアドレナリン5mg(1アンプル:1mg/mL)を,5%ブドウ糖液あるいは生理食塩水15mLで溶解し,溶液を20mLとします(250μg/mL)。患者の体重が50kgの場合,この濃度の溶液を1時間当たり3mLで投与すると,750μgの成分が1時間で投与されることになります。体重1kg当たりの1分間投与量に換算すると,0.25μg/kg/分程度になります。 アナフィラキシーの治療に関しては,2014年に日本アレルギー学会からアナフィラキシーガイドライン(文献1)が刊行されました。それによるとアナフィラキシーの第一選択薬はアドレナリンになっており,抗精神病薬併用禁忌の記載はなされておらず,有害事象として血圧低下は報告されていません。 また,アナフィラキシーに対するアドレナリンの臨床的意義には,α1,β1アドレナリン受容体の血圧上昇による低血圧およびショックの防止と緩和のほかに,β2アドレナリン受容体のメディエーターの放出低下,気管支拡張の促進があり,ノルアドレナリンでは代替はできないと考えられます。ノルアドレナリンとアナフィラキシー治療の第二選択薬であるH1抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン静脈投与,セチリジン経口投与など),β2アドレナリン受容体刺激薬(サルブタモール吸入投与など)の併用という選択も考えられますが,救命効果に乏しいと考えられます。そこでアナフィラキシーの場合には,アドレナリンの筋肉注射〔大腿部中央の前外側に0.1%アドレナリン(1:1000;1mg/mL)0.01mg/kg,通常量0.3mg〕をせざるをえないと考えています。 心肺蘇生時に関してですが,JRC(日本蘇生協議会)ガイドライン2010(文献2)において,使用を考慮してもよいとする血管収縮薬はアドレナリンとバソプレシンであり,ノルアドレナリンの記載はありません。 以上より筆者らは,アナフィラキシー時,心肺蘇生時ともに抗精神病薬使用時のノルアドレナリンの適応は乏しく,アドレナリンの使用はやむをえないと考えています。 簡略すると・・・ 【抗精神病薬服用患者にアドレナリン投与は一般的に禁忌】 【ただしノルアドレナリンは抗精神病薬服用患者にも使える】 【しかしアナフィラキシーガイドラインでは第一選択薬はアドレナリンと記載】 【心肺蘇生時の場合もガイドラインでは選択薬はアドレナリンと記載】 【実際、ノルアドレナリンは救命効果に乏しい】 【結論として、医師の指示の元ならばアドレナリンの使用はやむを得ない】 ③モノアミン仮説 モノアミン仮説は、統合失調症を説明するために必要な仮説ですね。 統合失調症っていうのは、なにかと申しますと、感情と思考を統合する機能が失われている状態と、説明されていますね。モノアミン仮説になかでも、ドパミン仮説が有力になっています。 (詳細版:統合失調症が発症する原因はまだはっきりとは明らかになっていませんが、神経伝達物質の異常が関わっていることが少しずつ分かってきました。 精神機能のネットワークは、脳内のさまざまな部位で行われており、部位同士が適切に情報をやり取りすることで、精神機能が保たれます。 その伝達に欠かせないのが、神経伝達物質です。 これにはさまざまな種類がありますが、統合失調症の発症と関係があると考えられているのはドパミンやセロトニンなどです。 ドパミンとは、私たちが「楽しい」「気持ちいい」と感じている時に出ている物質です。お酒やタバコを楽しんでいる時にも活性化されます。 セロトニンは、気持ちの安定や睡眠に関係する物質で、ドパミンによって興奮した気持ちを落ち着け、心のバランスを取ってくれます。 ドパミンを介して情報を伝達している神経経路はいくつかあり、それぞれに違った機能を持っています。 その神経経路の一つ、中脳辺縁系と言われる部分でドパミンが過剰に放出されていると、幻覚や妄想などの陽性症状が起こるとされています。 逆に、中脳皮質系と言われる部分では、ドパミンの機能の低下が見られることも分かってきました。それにより意欲減退などの陰性症状が現れると考えられています。 このように統合失調症では、中脳辺縁系ではドパミンの機能亢進が、中脳皮質系ではドパミンの機能低下が起こっているために、陽性症状と陰性症状という相反する症状が起こるとされています。) なんでそうなっちゃうかというと、ようするに統合失調症はドパミンが亢進しているからではないか、と言われているわけです。 はい、いま説明したのはですね、全部、仮説、なんですね。 実は証明されてないんですよ。検査したことがないんです。薬を飲んだらドパミンが減少して、その影響で陰性症状が、また増加すると陽性症状が出るっていう事実はわかっているんです。一方で、統合失調症はドパミンが増加するっていうのは、調べたことがないんですよ。精神疾患にかかって、すでに服薬して、亡くなった人の脳の神経ホルモンの濃度を計測した研究はあります、でも、それじゃ証明できないんです。証明するには、服薬していない人の、生きた状態の脳を削ってホルモンの濃度を測らないといけないんですね。でもそんなことは倫理的にできないし、この仮説を上回る説は登場してないし、だから仮説なんですね。みなさん仮説を根拠として処方された薬を飲んでいるというわけなんですよね。 はい。薬を飲み続けるとどうなるかわかりますか?もちろん依存します。依存しますよ。神経に関する薬はすべて依存します。ステロイドや血圧の薬もそうですね。それをやめるとどうなりますか?禁断症状がでますね。禁断症状がでます。精神科ではそれを病気が再燃した、といって投薬しますね。でも実は、病気じゃないんですね。ヘロインやめて禁断症状がでたからヘロイン供給して治った、ってだけなんですね。社会的問題を薬でどうにかしようとすると、依存という新しい問題が発生するわけです。ではどうすればいいんでしょうか。そこを考えることが私達の本当の仕事だと思うんですね。 ドパミン仮説以外にも、セロトニン仮説とかもありますね。 ドパミン遮断作用のみの抗精神病薬では陰性症状が改善されず、ドパミン遮断作用に加えてセロトニン遮断作用のある抗精神病薬において陰性症状への効果がみられることから、セロトニンが陰性症状の発現と関連しているのではないかと考えられているっちゅうやつですね。これもさっき説明したのと同じで、あくまで症状は薬の影響であって、薬の作用はわかっているけど、病態は仮説のままということですね。 グルタミン仮説っちゅうーのもあります。これも同じですね。 とはいえですね、すでに薬に依存している人には、薬物療法は切っても切れない関係にありますから、薬物療法が中心となるわけです。薬物療法が中心にあり、補佐的に、精神療法とリハビリテーションを行うのが、今の日本の精神医療なんですね。そして私たち精神科看護師は、この治療法をベースにして、ご本人とご家族に、服薬指導とか、生活指導をやっていく必要があるわけなんです。再発防止というか、怠薬防止に有効であると言われているんですね。皆さんはどう思いますか。 ④5つの向精神薬と作用 神経の話をしたので、次は薬の話をしていきますね。向精神薬は簡単に言うと5種類しかありません。5種類覚えておけばだいたい大丈夫です。抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、ですね。 はい。これが当院採用薬です。採用薬を、5つに分類したものです。真ん中の分類1をご覧ください。ちゃんと5つありますかね。その左に、さらに詳しく分類されていますので、ご参照いただければ大丈夫ではないかなと思います。ここまでで何か質問などりませんか。薬の名前とか言ってもらっていいですよ。 ⑤抗精神病薬のプロフィール CP換算ってご存じですか?知ってる方?(手上げる) この表はですね、クロルプロマジン100mgと同じくらいドーパミンを遮断するミリ数を求めたもの表です。これを、CP換算表といいます。リスペリドンでいえば、1mgと同じですよって書いていますね。これですね、この通りにならないんですよ。なぜかというと、ドパミンしか見ていないからです。ドパミンは鎮静度という意味では参考になるんですが、他の受容体に作用し、作用しないかが分からないので、予測される症状が分からず、看護師としてはあんまり役に立たないんですね。ドーパミン以外にも、セロトニン、ノルアドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン、グルタミン、GABAなど、色々な神経ホルモンと受容体があるわけですので。逆に言えば、神経ホルモンの動きを捉えると、今後の症状が予測でき、看護に活かすことができるかもしれないわけですね。 抗精神病薬プロフィールってご存じですか?知ってる方?(手上げる) ドパミンだけじゃなく、すべてのホルモンへの効果を表しましょう、というのが、抗精神病薬プロフィールになります。製薬会社がこんな風にまとめてますね。これ数値が小さいほど効果が大きいんですが、これみて何かわかりますか?アリピプラゾールは、ドパミン2受容体に、0.34作用しますって書いてますが、わかりますか?よくわかる人?(手上げる)分かりませんね。製薬会社がまとめたプロフィールは分かりにくいと思います。 これは海外の資料ですが、例えばOlanzapineはムスカリンを半分くらい遮断しますって書いてますが、結構わかりやすくなりましたけど、ほかの薬と比較しにくいと思いませんか。全部効果が弱いかもしれないし、強いかもしれないので、全体的な強さが分かりませんね。 この図にはですね、ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリンが示されています。三角が多いほど遮断されているってことですね。これどうですか?どの受容体に作用し、作用しないかが、3段階でおおざっぱではありますが、わかりやすくないですか?強さも他の薬と比較できますね? この3つの中でどれが一番わかりやすいですか? こっちの人(手上げる) こっちの人(手上げる) こっちの人(手上げる) (こっちはですね、僕が作りました。著作権や特許は私にあります。笑) はい、では、こちらの表のスタイルで、抗精神病薬のプロフィールを見てみましょう。 お手元の資料の、5つの神経ホルモンと働き、をご参照いただきながらご覧ください。 定型抗精神病薬 ・統合失調症のお薬として、古くから開発されてきたお薬が  定型抗精神病薬。非定型抗精神病薬に主役をゆずっ  ているが、今でもよく使われている。 ・定型抗精神病薬は大きく3つのタイプに分けられる  - 陽性症状に対して: ハロペリドール <ブチロフェノン系>  - 興奮に対して: クロルプロマジン <フェノチアジン系>  - その他: スルピリド <ベンズアミド系>  として使われることが多い CP(クロルプロマジン) ・豚の駆虫剤や染料から抽出された初めての抗精神病薬。 ・鎮静作用と催眠作用が強く、統合失調症のほかに躁病・不安・緊張・  他の睡眠薬が無効な不眠症にも用いる。抗アレルギー作用もある。 ・少量の使用で鎮静作用があり、大量の場合催眠作用がある。 ・幻覚や妄想に対する作用はそれほどではないが、興奮、イライラ  感、・不安感などの症状が強い場合に使われることが多い。 ・様々な受容体に作用するため、多岐にわたる副作用が認められる。 ・錐体外路系副作用は比較的少なく、口の渇きや便秘、過鎮静、  血圧低下によるめまい・ふらつきが起こりやすい。 ・体重増加を起こしやすい。人によっては、目がちかちかし、  光に過敏になる場合がある。(視力調節障害) ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約3~4時間、  作用持続時間:10時間以内 説明用:19世紀、産業革命を背景として、繊維を染める合成染料の開発が進められていました。その中で、「フェノチアジン」という物質が発見され、メチレンブルーなどの鮮やかな青色の染料が生まれました。また、駆虫薬として用いられていました。 これには抗アレルギー作用があることが分かり、薬として研究されていきます。 その結果作られたのが、最初の抗精神病薬であるクロルプロマジンです。 それまでは、統合失調症の患者さんに対する有効な治療法はほとんどなく、病院に隔離し、物理的に拘束していました。 クロルプロマジンの発見により、薬物療法が可能となり、統合失調症の治療は大きく変わりました。 クロルプロマジンについて詳しく見ていきます。 このお薬は、当院では「ウインタミン」や「コントミン」という商品名のものです。 古くから使われているお薬は、定型薬と呼ばれています。 クロルプロマジンの効き目を図で表したものがこちらになります。 赤で囲った部分、ドパミン受容体を阻害する作用が、このお薬の主作用になります。 ドパミンの代わりに、ドパミン受容体にくっつくことで、ドパミン神経の過剰な興奮を抑え、幻覚や妄想といった陽性症状を改善します。 また、このお薬はドパミンの他に「ムスカリン」「ヒスタミン」「アドレナリン」といった受容体にも作用するため、口の渇き・便秘、眠気、立ちくらみなどの副作用を持っています。 鎮静・催眠作用が強いので、興奮やイライラ感の強い症例によく使われます。 HAL(ハロペリド-ル) ・覚せい剤中毒による症状を抑える薬として開発され、幻覚・妄想を  抑える作用が、抗精神病薬として応用された。 ・幻覚や妄想に対する作用が強い。 ・統合失調症のほか、躁病の興奮状態に対しても効果がある。 ・ドパミンをブロックしすぎてしまうため、錐体外路系の副作用が多い。    自律神経系の副作用(起立性低血圧など)は少ない。 ・少量では精神活動を賦活し、高用量では鎮静という作用の二面性が  あるとされている。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約5時間、  作用持続時間:約24時間 説明:クロルプロマジンが発見されたのと同じ頃、ヨーロッパでは覚せい剤が蔓延し、問題となっていました。 覚せい剤中毒者が苦しむ幻覚・妄想などの症状を抑える研究が進められ、その中でうまれたのがハロペリドールです。 ハロペリドールについて詳しく見ていきます。 このお薬は、当院では「リントン」や「セレネース」という商品名のものです。 ハロペリドールの効き目を図で表したものがこちらになります。 クロルプロマジンと同じく、赤で囲ったドパミン受容体を阻害する作用が、このお薬の主作用になります。 このお薬の作用は単純で、ドパミンの他には「アドレナリン」受容体に作用します。 そのため、口の渇き・便秘といった副作用は少なく、強力な抗幻覚・妄想作用を持っています。 この二つのお薬に代表される「定型抗精神病薬」は、図のオレンジ色の部分、中脳辺縁系のドパミンを強力に抑制することで陽性症状を改善する一方、その他のドパミン経路も抑制してしまいます。 ドパミンの機能が低下している青色の中脳皮質系という部分に作用し、さらにドパミンの機能を低下させて陰性症状が悪化する副作用が見られます。 また、運動機能に関係する緑色の黒質線条体系に作用することで、手足が震えたり、動作が鈍くなったり、目が上を向いたままになったり、舌が出たままになったり、足がむずむずしたり、じっとしていられない、などといった錐体外路系の運動機能障害が、さらにホルモンの分泌に関係するピンク色の漏斗下垂体系という部分に作用することで月経不順や性機能障害などの副作用が現れることがあります。 陽性症状に対しては定型薬は非常に良く効くのですが、同時に多くの副作用もあるため、これが統合失調症治療において大きな問題となっていました。 特に錐体外路系の症状は、見た目にもすぐ分かるものが多く、副作用であることがわかりやすいですし、かなりの頻度で見られます。 患者さんの生活にも大きく影響するため、副作用の中でも特に問題となってきました。 非定型抗精神病薬 ・ドパミン受容体に緩く結合させたり、ドパミンだけでなくセロトニンなど複数の受容体に作用させたりすることを目指して作られた向精神薬。 各受容体の親和性等により次のように分類される ・SDA(セロトニン・ドパミン遮断薬):セロトニン、ドパミンへの  親和性が高く、副作用はやや多い ・MARTA(多元受容体作用抗精神病薬):様々な受容体に作用する  ため、代謝障害を含め、多岐にわたる副作用が認められる。 ・DSS(ドパミン受容体部分作動薬):ドパミンの量を調整  副作用が全体的に少ない、アカシジアが多い、鎮静作用が弱い ・SDAM:セロトニンとドパミンの量を調整  副作用が全体的に少ない、アカシジアが多い、鎮静作用が弱い 説明:そこで、副作用が少なく、より有効な薬の開発が進められていきます。 クロルプロマジンをもとに、クエチアピン(セロクエル)や、オランザピン(ジプレキサ)が、 ハロペリドールをもとに、リスペリドン(リスパダール)やペロスピロン(ルーラン)が、 そして、新しいメカニズムのお薬であるアリピプラゾール(エビリファイ)が開発されました。 これらの新しいお薬は、「非定型薬」と呼ばれています。 「定型」とは決まった形、という意味で、従来型のお薬は抗精神病作用の強さに比例して、錐体外路系の副作用が起こっていました。 これに対して、新規型のお薬は抗精神病作用の強さと、錐体外路症状の発生に関連性が薄く、それまでの「定型」に当てはまらない、と言う意味で「非定型」と呼ばれるようになりました。 次に、非定型薬の特徴について見ていきます。 一つ目の特徴ですが、非定型抗精神病薬は、ドパミンだけでなくセロトニンやその他の神経伝達物質への作用を持っています。 セロトニンは、ドパミンとシーソーのような関係にあり、セロトニンを抑えるとドパミン神経は刺激されます。 これを利用して、セロトニンを抑制することでドパミン神経を抑制しすぎないようにします。 また、今までのお薬はドパミン受容体にくっつくと、完全に神経伝達をブロックしていましたが、新しいお薬のうち「エビリファイ」という商品名のものは、ドパミン受容体にくっついて神経伝達を軽い程度の伝達に変える作用があります。 これによって、ドパミンが過剰な部分では抑えて、ドパミンが足りない部分では適度な刺激を与えることができます。 これはエビリファイだけが持つ特徴です。 そして三番目の作用ですが、古いタイプのお薬は、ドパミン受容体にしっかりくっつしてなかなか外れないのですが、 非定型薬は、ドパミン受容体に緩く結合することで、ドパミン神経を抑制しすぎないように働きます。 非定型抗精神病薬は、このような特徴によって、錐体外路症状などの副作用が少なく、陽性症状はもちろん、定型薬では改善が得られない陰性症状に対しても効果が得られることがあります。→と言われてますが、、、 RIS(リスペリドン)SDA ・特に陽性症状(イライラや興奮など)に対し、素早く強力な作用  を示す点が特徴。 ・幻覚・妄想などの陽性症状が比較的強い急性期や、再発・再燃して  しまった症例に使用。 ・副作用は全体的に少ないものの、他の同類薬と比べ高プロラクチン  血症の発現がやや多く、生理不順や乳汁分泌、性機能障害などを  起こすことがある。 ・鎮静と体重増加が見られる(ジプレキサほど強くはない) ・飲み始めの副作用として、ふらつきやめまい(起立性低血圧)、  眠気や倦怠感(鎮静)、 不眠が現れることもある。 ・高用量では錐体外路系の副作用が出現しやすい。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約3時間、  作用持続時間:約21時間 説明:このお薬は、当院では「リスペリドン」「リスパダール」という商品名のものです。 リスペリドンの効き目を図で表したものがこちらになります。 赤で囲った部分、ドパミン受容体とセロトニン受容体を阻害する作用が、このお薬の主作用になります。 定型薬と同じく、ドパミンの代わりに、受容体にくっつくことで、ドパミン神経の過剰な興奮を抑え、幻覚や妄想といった陽性症状を改善します。 また、セロトニン受容体にもくっつくことで、必要なドパミン神経を活性化させ、陰性症状の改善や副作用の軽減をもたらします。 このお薬はハロペリドールをもとにして作られているため、陽性症状を抑える作用は強力です。 副作用は全体的に少ないですが、ホルモンの異常である高プロラクチン血症を起こしやすく、高用量では錐体外路系の副作用も出やすいお薬です。 PAL(インヴェガ)SDA ・インヴェガは、すでに発売されていたリスパダール(一般名:リスパダール)を改良して作らた。リスパダールは体内で代謝され、パリペリドンに変化する。このパリペリドンを取り出し、多層コーティングしたものがインヴェガである。 ・インヴェガは、肝臓で代謝を受ける必要が少なく、おもに腎臓から排泄される。 ・リスペリドン製剤は1日2回投与が必要であるのに対し、インヴェガ錠では、1日1回の投与でパロペリドンの血中濃度を24時間維持できる。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約24時間、  作用持続時間:約46時間 LUL(ペロスピロン)SDA ・鎮静作用は弱いが副作用が比較的少ない。 ・不安・抑うつ症状、神経症様症状(脅迫症状)を伴う症例、  症状が安定している維持期等に有効。 ・維持期に入って錐体外路症状や高プロラクチン血症などが問題  となる症例で効果が期待される。 ・急性期よりは、長期服用に適した薬である。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約1~2時間、  作用持続時間:約5~8時間 BLN(ブロナンセリン)SDA ・代謝障害による体重増加、過鎮静による眠気、抗α1作用による起立性低血圧等の副作用が少ない。 ・服用量が多くなると、ドパミン遮断作用による手のふるえ、こわばり、じっとできないといったEPSがでやすくなる。また、長期服用時は「遅発性ジスキネジア」にも注意が必要。 ・代謝に悪影響を及ぼしにくい。 ・脂溶性が高く、連日服用を行っていくことで、半減期:67.9時間まで延び、薬が身体から抜けにくくなる。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約1.5時間、  作用持続時間:約11~16時間 OLZ(オランザピン)MARTA ・統合失調症のみならず、双極性障害のうつ病相の治療、難治性  うつ病の治療にも有用。 ・やる気が出ない・外に出たくないなどの陰性症状や、抑うつ症状  が強い症状、あるいは陽性症状にも効果があり、急性期から慢性  期まで適応範囲が広い薬。 ・過鎮静と体重増加がよく見られる副作用。体重増加は約3分の1に  現れるとされている。 ・鎮静は服用開始時や増量時に見られるが、通常は数週間で消失。 ・抗コリン作用(口渇、便秘、かすみ目など)が見られる。  プロラクチンの上昇作用は少ない。 ・血糖上昇の副作用があり、糖尿病の患者、糖尿病の既往のある患者  には禁忌。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約5時間、  作用持続時間:約28時間 説明:次に、オランザピンについてです。 このお薬は、当院では「ジプレキサ」という商品名のものです。 オランザピンの効き目を図で表したものがこちらになります。 このお薬も、ドパミン受容体とセロトニン受容体を阻害する作用が、主作用になります。陽性症状・陰性症状どちらにも有効で、急性期から慢性期まで広く使われるお薬です。 加えて、ムスカリン・ヒスタミン・アドレナリン受容体を阻害する作用も持つことから、過鎮静と体重増加の副作用が多く見られます。体重増加は約1/3の人に見られると言われています。 クエチアピンと同じく、血糖上昇の副作用があるので、糖尿病の既往のある患者さんには禁忌となっています。 QUE(クエチアピン)MARTA ・アカシジアが出にくい ・錐体外路症状が出やすい人、睡眠障害が目立つ人、軽症から中等症  の精神症状を有する人に適する。 ・よく見られる副作用は過鎮静、立ちくらみ(起立性低血圧)、  体重増加。錐体外路症状、プロラクチン上昇作用が極めて少ない。 ・血糖上昇の副作用があり、糖尿病の患者、糖尿病の既往のある患者  には禁忌。食欲増加と体重増加には充分な注意が必要。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約2時間半、  作用持続時間:約3時間 説明:次に、クエチアピンについて詳しく見ていきます。 このお薬は、当院では「セロクエル」という商品名のものです。 クエチアピンの効き目を図で表したものがこちらになります。 先ほどのリスペリドンと同じく、ドパミン受容体とセロトニン受容体を阻害する作用が、このお薬の主作用になります。陽性症状・陰性症状どちらにも有効なお薬です。 加えて、ヒスタミン・アドレナリン受容体を阻害する作用も持つことから、眠気や体重増加、立ちくらみなどの副作用があります。 セロトニン6と7の受容体にも作用するとされていますが、これらの影響ははっきり分かっていません。 今まで紹介してきたお薬と比較して、錐体外路症状やプロラクチン上昇の副作用が極めて少ないお薬です。 しかし、血糖上昇の副作用があるので、糖尿病の既往のある患者さんには禁忌となっています。 アセナピン(シクレスト)MARTA ・MARTAの中では代謝への悪影響が少なく、糖尿病の患者さんにも使える。また、抗コリン作用が少ない。 ・シクレストの承認時の副作用報告では、傾眠(12.9%)、口の感覚鈍麻(10.1%)、アカシジア(8.4%%)、錐体外路障害(6.3%)、体重増加(6.3%)、浮動性めまい(5.2%) ・お薬を飲みこんでしまうと肝臓で分解されてしまい、効果が減弱してしまう。(初回通過効果が大きい)このため、溶けたお薬を舌下や頬壁にそのままにしておく必要がある。2分で80%、5分で90%吸収されることがわかっている。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約1時間、  作用持続時間:約24時間 CLO(クロザピン)MARTA ・従来の定型抗精神病薬とは効き方が違う非定型抗精神病薬。治療抵抗性統合失調症の患者様に対して、効果があることが世界で唯一認められ、現在97カ国で使用されている。日本でも2009年から使われ始め、研修を受けた登録病院・医師のもとで、使用されている。 ・開発は1960年代と比較的古く、セロトニン・ドーパミン拮抗薬(いわゆるSDA)開発のさきがけとなった薬剤。発売後まもなく、無顆粒球症などの重篤な副作用が問題となり、世界的に製造・販売が一時停止され、日本での開発も進まなかった。ところが、その後 既存薬の無効例に対する有用性が改めて見直され、アメリカやイギリスで再び使用されるようになった。そして日本でも、厳重な管理体制をとることを条件に承認される運びとなった。 ・従来の抗精神病薬はドーパミン受容体うちのドパミン2受容体を主に遮断するが、この薬はそうではなく別の作用機序に基づいてドパミン神経系を抑制する。このような作用特性から、既存の治療薬が無効な患者さんでも、60~70%くらいの割合で有効。副作用としては、錐体外路症状(ふるえ、こわばり)が少ない反面、重篤な血液障害や糖尿病をまねくことがある。 ・最大の問題は副作用。命に関わる無顆粒球症や糖尿病、心筋炎などを起こす危険性がある。そのため、最終選択肢として、既存の治療薬が効かない治療抵抗性統合失調症に限り適用となる。また、処方や調剤ができるのは一定の基準を満たす登録済みの医療機関や薬局に限られ、投薬にあたっては使用手引き「クロザリル患者モニタリングサービス」に基づかなければならない。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約3時間、  作用持続時間:約16時間 ARP(アリピプラゾ-ル)DSS ・陽性症状・陰性症状の目立つ、初発の人に特に有効。 ・症状の安定した慢性統合失調症に対する再発予防効果も期待できる  と言われている。 ・少量で抗うつ効果もある(他の抗うつ薬と併用して使用) ・他の非定型薬と比較して錐体外路症状、高プロラクチン血症、  過鎮静、体重増加、不整脈、血糖値の上昇や脂質代謝異常という  副作用はほとんど見られない。 ・鎮静効果が弱く、不眠・焦燥や胃腸症状が初期に出現しやすい。 ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約3時間半、  作用持続時間:約61時間 説明:最後に、アリピプラゾールについてです。 このお薬は、当院では「エビリファイ」という商品名のものです。 エビリファイの効き目を図で表したものがこちらになります。 このお薬は他のものと違って、ドパミン受容体をブロックするのではなく、程よく機能を調節してくれます。 ドパミン神経が過剰に働いているところは抑え、動きが悪いところは適度に刺激することで、陽性症状・陰性症状を抑えます。また、副作用も少なく、使いやすいお薬です。 また、セロトニン1A受容体を刺激する作用も持つことから、抗うつ作用もあるとされています。 鎮静作用が弱いので、興奮の強い患者さんには向きませんが、副作用が少ないので維持期に長く飲むのには非常に適したお薬と言えます。 副作用としては、飲みはじめに、不眠や胃腸症状が現れることがあります。 BRX (レキサルティ)SDAM ・レキサルティは、セロトニンとドパミンの働きを適切に調節する新薬。過剰な場合はそれぞれの働きを抑え、不足している場合は補ってくれるような、部分作動薬(パーシャルアゴニスト)としての作用がある。 ・レキサルティは低用量ではセロトニンやドパミンの働きを強め、高用量では、その働きを抑える。 ・このためレキサルティでは、統合失調症、うつ病・うつ状態、双極性障害(とくに躁状態・混合状態)、衝動のコントロールできない状態(認知症や発達障害など)など、エビリファイと同じような病気での効果・効能が期待できる。 ・レキサルティの承認時の副作用頻度は、アカシジア(5.7%)、頭痛(4.5%)、不眠(4.5%)、体重増加(3.1%)、振戦(2.8%)、傾眠(2.0%) ・効果が最も強くなる最高血中濃度到達時間:約6時間、  作用持続時間:約52~66時間 説明まとめ:よく使われるお薬についてご紹介してきましたが、これ以外にも抗精神病薬はたくさんあります。 多くのお薬から、患者さんにあった薬を選択することが重要です。 現在の第一選択薬は、非定型のお薬ですが、急性期の激しい症状を鎮めたり、回復を助けたりするためには、定型のお薬も必要不可欠です。 薬の効果は人によって個人差があり、患者さんとの相性もあります。 症状や副作用、飲みやすさなどによって、患者さんにあったお薬が処方されています。 普段から患者さんを観察し、コミュニケーションをとりながら、薬で改善した症状・改善していない症状、 副作用があるか、薬の飲み心地はどうか、生活に影響する症状があるかなど、患者さんが今飲んでいる薬が合っているかどうか考えてみる姿勢が必要です。 患者さんが相談しやすい環境を作ることも大事です。 ⑥抗不安薬のプロフィール これからその他の薬剤の機序をお伝えしていこうと思います。お手元の資料の、④5つの向精神薬と作用の「採用薬の5分類」をご参照頂ければと思います。 製薬会社の説明する不安、抗不安薬 『 健康な人が日常に体験する不安と、治療が必要な不安との違いについて考えてみたいと思います。 まず、正常な不安の特徴として挙げられるのは、家族の死や身体の病気など、不安になる理由が明らかであること。 したがって、その内容は言葉で話すことができ、内容を聞いて、周囲の人が共感・理解できること。 不安は我慢ができ、治療を必要としないものであること。 不安の期間も短く、一晩眠ることによって軽快すること。 不安がいったん消失すると、再発しないこと。 これに対して病的な不安とは、「理由がなく」「共感・理解できない」など場面にそぐわないもの、そして「我慢できない」「軽くならない」など過度であるもの、さらに「再発する」、反復して出現するといった大変苦しいもので、治療的介入が必要となります。 次に、不安が起こる仕組みについて説明します。 不安とは、脳の中にあるセロトニンという物質の調節異常によって起こると考えられています。 このセロトニンとは、食欲や睡眠、衝動性や緊張などに関係する物質です。 脳内の情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。 不足すると感情のブレーキがきかなくなったり、うつ病やパニック発作の原因となることがあります。 ストレスによってセロトニンの調節がうまくいかなくなると、車で例えると、このようにスピードをコントロールできずに暴走するような状態になってしまいます。気持ちがこのような状態になると不安が起こります。 次に、不安を抑える仕組みについて説明します。 もともと私たちの脳の中には、GABAと呼ばれる神経の興奮を抑える物質があります。 正式名称はガンマアミノらくさんといい、もともと体内にあるアミノ酸の一種です。簡単に言うと、人の体にある天然の安定剤のようなもので、発芽玄米などに多く含まれるとされ、健康食品にも、このGABAの入ったものが多くあるので、聞いたことがある人も多いと思います。 そして、先ほども出てきたセロトニン、これも精神の安定に関与していて、特にセロトニン1A受容体が不安に関係していることが分かっています。 抗不安薬として使われている薬には、主に2種類あり、一つはGABAの働きを高める薬、もう一つはセロトニン1A受容体を刺激する薬になります。 前のスライドで説明したように、不安を車が暴走している状態に例えると、GABAの働きを高める薬はブレーキを踏む役割をします。これはすぐに効果が現れますが、一時的な作用になります。 これに対してセロトニン1A受容体を刺激する薬は、アクセルを緩める役割をします。これは効果が出てくるまで時間はかかりますが、作用は長く続きます。 このように、ブレーキを踏む作用とアクセルを緩める作用によって、暴走している車、つまり不安が止まる、ということになります。 まずは、このGABAの働きを高める薬について詳しく説明していきたいと思います。 GABAの働きを高める薬がどのように作用するか、図で表わしたものがこちらになります。 まず、この赤い枠で囲んだほうは、薬がない状態です。黄色いものは脳にある神経、青いものはもともと体の中にあるGABA、オレンジのものはGABA受容体というGABAがくっつく場所です。 まず、GABAが受容体に結合します。すると、神経の興奮を抑える信号が伝達され、結果として不安を抑えたり、                  他にも筋肉を緩めたり、寝つきを良くしたり、痙攣を抑えるといった作用があらわれます。 次に、青い枠で囲んだほうは、薬がある状態です。GABA受容体には、GABA以外のものがくっつく場所があり、薬はそこに結合します。 GABAと薬両方が結合すると、神経の興奮を抑える信号が増幅されて伝達されます。これによって、これらの作用がより強く現れます。 現在、GABAの働きを高める薬として使われている主なものは、ベンゾジアゼピン系と呼ばれているお薬です。 』 すみません、プロフィールまではできてません。代わりに機序を載せます。 ベンゾジアゼピン系の薬がGABA受容体にくっつくと、GABAの働きを高めることができます。つまり、神経の興奮を鎮めて、不安を抑えるなどの作用を発揮します。 しかし、ベンゾジアゼピン系の薬のみが受容体にくっついても、作用は示しません。あくまでも、生理的刺激を最大にするのみ、つまり、もともと身体にあるGABAの働きを最大にするだけで、仮に大量に服用したとしても、死に至るような重大な事故につながることはほとんどなく、安全に使用できるお薬だとされています。 ちなみに、GABA受容体にはベンゾジアゼピン以外にもいろいろなお薬がくっつきます。昔、睡眠薬として良く使われていたバルビツール酸系と呼ばれるお薬や、薬以外にもアルコールがこの部分にくっつくことがわかっています。 それらは、GABAがなくても神経の興奮を鎮める信号を伝達してしまいます。 よって、これらを大量に服用すると、重大な事故につながる可能性があります。       ベンゾジアゼピン系のお薬は、薬のみでは作用を持たない、というのが安全に使用できるポイントです。 続いて、ベンゾジアゼピン系のお薬の作用と副作用についてご紹介します。 この種類のお薬は、抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用の4つの作用を持っています。 その中で、特に抗不安作用の強いお薬を「抗不安薬」と呼んでいます。殆どがベンゾです。 副作用としては、集中力や注意力の低下、眠気、倦怠感、脱力感、ふらつき、健忘などの記憶障害が起こることがあります。また、依存性や耐性という問題もあります。なので抗不安薬は、できれば頓服薬として症状のあるときにだけ使うのが理想的です。 同じベンゾ系でも色々な薬があるが、殆どが作用時間の違いです。 ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、作用時間の短い順に、短時間型、中時間型、長時間型、超長時間型の4種類に分類されています。 作用時間の違いを大雑把に確認するには、お手元の資料の、④5つの向精神薬と作用の「採用薬の5分類」をご参照頂ければいいかと思います。 ルネスタもGABAなんですね。 マイスリー、ロゼレムはメラトニン作用型 ベルソムラはオレキシン作用型 (スライド参照) ⑦抗てんかん薬のプロフィール  すみません、プロフィールまではできてません。代わりに機序を載せます。 抗てんかん薬っていうのは、名前の通り、てんかんおよび痙攣に使用する薬品です。 てんかんとは 脳における過剰な放電により、発作が反復しておこる慢性脳疾患です。 過剰な放電の機序は、GABAの減弱とグルタミンの亢進であるといわれています。 神経学的に興奮しすぎるっていうことですね。 てんかんの発作は、意識消失の有無・程度により次の3つに分類されます。    ・ 部分発作(意識消失なし)    ・ 欠神発作(数秒間意識消失)    ・ 強直間代発作(数分程度の意識消失) 抗てんかん薬は、大きく2機序で神経の興奮に対処します。 ・グルタミン受容体を遮断させて興奮を抑えるか、 ・GABAを作動・賦活させて興奮を抑えるか、 の2つです。 グルタミン受容体は大きく3つあり、(Na+チャネル遮断、Ca2+チャネル遮断、グルタミン酸拮抗)という形で遮断します ⅰ.GABAを作動・賦活タイプ このタイプの代表的な抗てんかん薬には    ・ フェノバルビタール(フェノバール)    ・ プリミドン(マイソリン)    ・ ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)    ・ クロナゼパム(リボトリール)    ・ ニトラゼパム(ベンザリン)    ・ バルプロ酸ナトリウム(デパケン) が挙げられます。 これらは、GABAを作動・賦活することで抗てんかん作用を示します。 主に全身性のてんかんに使用されます。 VPAはGABA作動薬なんですね。 フェノバルビタールの作用機序は GABAA 受容体のバルビツール酸誘導体結合部位に結合し GABA 神経系の活動性を高めることで抗てんかん作用を示します。 プリミドンは、体内でフェノバルビタールなどに代謝され、様々な作用機序を介して効果を示します。 下の3つ(〇〇ゼパム)はBz(ベンゾジアゼピン)系の薬です。 その作用機序は、GABAA 受容体の Bz 結合部位に結合し GABA 神経系の活動性を高めることで抗てんかん作用を示します。 ⅱ.グルタミン受容体を遮断    ・ フェニトイン(ヒダントール)    ・ カルバマゼピン(テグレトール)    ・ ラモトリギン(ラミクタール)    ・ エトスクシミド(ザロンチン)    ・ トリメタジオン(ミノ・アレビアチン) が挙げられます。 これらは、グルタミン受容体を遮断することで抗てんかん作用を示します。 主に部分てんかんに使用されます。 また、上記ののほか様々な作用機序で抗てんかん作用を示すものとして    ・ ガバペンチン(ガバペン)    ・ ゾニサミド(エクセグラン) 抗てんかん薬についてまとめると 以下の表のようになります。 これを外すと躁転する可能性が高いということと、てんかんの既往がある場合はてんかんが起こり生命に関わる可能性が最も高いので、減薬時は最後まで残すことが多いです。そのほか特徴としては、治療域と有毒域が近いため治療薬物モニタリングが必要になる薬が多いです。 ⑧抗うつ薬のプロフィール すみません、プロフィールまではできてません。代わりに機序を載せます。 ・SSRI=Selective Serotonin Reuptake Inhibitors(インヒビター:阻害剤) ・SNRI=Serotonin & Norepinephrine(ノルエピネフィリン=ノルアドレナリン) Reuptake Inhibitors 主にセロトニンやノルアドレナリンを賦活するんですね。 NaSSAはヒスタミンも遮断しますね。 NaSSAはミルタザピンですね。Hを遮断するので、鎮静作用もあるんですね。 SSRI フルボキサミン デプロメール パロキセチン パキシル セルトラリン ジェイゾロフト エスシタロプラム レクサプロ SNRI ミルナシプラン トレドミン デュロキセチン サインバルタ ベンラファキシン イフェクサー NaSSA ミルタザピン リフレックス・レメロン 三環系抗うつ薬(第一世代) イミプラミン イミドール クロミプラミン アナフラニール アミトリプチン トリプタノール ノルトリプチリン ノリトレン トリミプラミン スルモンチール 三環系抗うつ薬(第二世代) ロフェプラミン アンプリット アモキサピン アモキサン ドスレピン プロチアデン 四環系抗うつ薬 マプロチリン ルジオミール ミアンセリン テトラミド セチプチリン テシプール トリアゾロピリジン系抗うつ薬 トラゾドン デジレル・レスリン はい。こちらはSSRI,SNRI,NaSSAのプロフィールになります。すみませんグラフにしていないので非常に分かりにくいと思いますがご了承ください。 はい、こちらは三環系、四環系、トラゾドンのプロフィールです。 セディール 抗不安薬  5HT1A刺激。シナプス後膜の5HT1A刺激による抗不安作用→抗鬱 デジレル SARI。5HT2A遮断、5HT再取り込み阻害、α遮断。5HT2A遮断→鎮静、5HT1A刺激→抗不安作用→抗鬱 パキシル SSRI。5HT再取り込み阻害。5HT1A刺激→抗不安作用→抗鬱 トレドミン SNRI。5HT,NA再取り込み阻害。5HT1A刺激、NA増加作用→抗不安作用→抗鬱 トフラニール 三環系。5HT,NA再取り込み阻害、α遮断、抗コリン、H1遮断。5HT1A刺激、NA増加作用→抗不安作用→抗鬱。心毒性あり。効果発現はSSRIよりも遅く、約1ヶ月以上はかかる。 テトラミド 四環系。α2遮断、α1遮断、弱い抗コリン。α2遮断作用によるNA放出促進→抗鬱。α1遮断→セロトニン拮抗。 ルジオミール 四環系。NA再取り込み阻害(5HTは再取り込み阻害作用なし)。NA濃度上昇→抗鬱 リフレックス NaSSA。5HT2、5HT3遮断、α2遮断。α2遮断→NA・5HT放出促進→抗鬱。5HT2、5HT3遮断→5HT1A選択性亢進。 はい、抗うつ作用に至るまでのさらに詳しい機序です。 これ一言でいうと、よくわかりませんが1~2週間で調節機構が外れて効くようになりますよ、と言うことですね。悪く言えば依存して安定しますって製薬会社は言ってるんですね。 ※SSRI等再取り込み阻害薬により、シナプス間隙のセロトニンが増加するとシナプス前膜の5HT1Aと5HT1B/1Dのオートレセプターを介したネガティブ・フィードバックが働くが、反復投与による脱感作(1~2週間)で抑制が外れると、セロトニンの分泌が上昇し、シナプス後膜の5HT1Aを介した抗不安効果が発現する。 シナプス後膜の5HT2受容体のダウンレギュレーションと抗鬱効果についてはまだ明らかではない。 抗鬱効果を発揮するためにはシナプス後膜の5HT1A受容体の活性化が重要。5HT1A受容体の刺激作用は、抗うつ作用・抗不安作用を示すとともに、前頭前野のドパミン放出を促進し、認知・陰性症状を改善すると考えられている。 WIKIにもっとマニアックな詳しいことが書いていますが、聞きたい方?いませんね。 え、ききますか。↓MDMAと同じ作用って書いてます。MDMAってご存じですか。・・・  SSRI、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬はいずれも抗うつ作用を持ち、セロトニントランスポーターを阻害する。三環系抗うつ薬はノルアドレナリン再取込阻害薬も持ち、セロトニントランスポーターに対する親和性が低いものもある。セロトニン、ノルアドレナリンの代謝酵素MAOAの阻害薬も抗うつ作用を持つ。このように、セロトニンの再取込や代謝酵素の阻害によって、シナプスや細胞外のセロトニン濃度を上昇させる、又はセロトニン含量を増やす薬物が抗うつ薬として用いられている。また、SSRIは抗不安薬としても広く用いられている[19]。情動調節におけるセロトニンの役割には不明な点が多く、セロトニン濃度上昇が抗うつ作用や抗不安作用に結びつくメカニズムも不明である。これらの薬物の治療効果の発現には一般に数週間を要するため、セロトニン濃度上昇そのものではなく、2次的な変化が治療効果を担うと考えられている。統合失調症や躁状態の治療に用いられる抗精神病薬は様々な伝達物質受容体に対する遮断作用を持ち、セロトニン受容体に対する遮断作用も強い。特に非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬)に属するセロトニン・ドーパミンアンタゴニストは5-HT2A受容体に対する遮断作用が強いが、抗精神病作用との関連は明らかではない[28]。  コカイン、アンフェタミン、MDMA(3,4-methylenedioxymethamphetamine)などの精神刺激薬は細胞膜のモノアミントランスポーターを標的とする。一般にこれらの薬物には依存性があり、実験動物では自己投与の条件付けが成立する。コカインは再取込阻害薬であり、アンフェタミン類はトランスポーターの逆輸送によってモノアミンの放出を起こす。ドーパミントランスポーターに対する作用が行動に及ぼす影響において重要とされており、セロトニントランスポーターに対する作用の強さは自己投与における効力と負の相関を示す[29]。幻覚薬にはセロトニン受容体に対してアゴニスト作用を持つものがあり、メスカリンなどのフェニルアルキルアミン系薬とシロシビンやLSD(lysergic acid diethylamide)などのインドールアミン系薬がある。フェニルアルキルアミン系薬は比較的5-HT2ファミリーの受容体に対する親和性が高い。インドールアミン系薬は5-HT1A受容体に対する親和性が高く、セロトニン神経の活動を抑制する。いずれも複数のセロトニン受容体に作用するが、幻覚誘発作用は5-HT2A受容体に依存すると考えられている[30]。しかし、必ずしも全ての5-HT2A受容体アゴニストが幻覚誘発作用を持つのではなく、幻覚誘発作用を持つものと持たないものでは下流のシグナル経路が異なることが示唆されている[31]。 SSRIが攻撃性に対して抑制的、促進的、どちらにも働き得ることが報告されている これはですね、セロトニンのサブタイプに、安心させる受容体の他、不安にさせる受容体、興奮させる受容体も存在しているので、どっちに転ぶかわからないって言いたいんですね。 添付文書の副作用にちゃんと暴力や自傷他害って書いています、副作用が強烈ということですね。ちなみに離脱症状も強烈です。抗うつ薬は注意してみておいたほうがいいと言えますね。 ⑨その他の薬剤のプロフィール 〇抗パーキンソン病薬 抗パーキンソン病薬は、パーキンソン病やパーキンソン症候群の症状を治療し軽減する目的で用いられる薬物です。これらは、主にドーパミンを賦活させたり、アセチルコリンを遮断することによって作用します。 ・抗コリン:アマンタジン、ビペリデン ・ドパミン賦活:カルコーパ、ロピニロール、セレギニン ・GABA抑制:ノウリアスト ・ノルアドレナリン賦活:ドプス 〇注射剤 抗精神病薬の注射剤のことですね。 抗精神病薬には、2つの目的の注射剤が発売されています。 ・即効性を期待した注射剤 ・持続的な効果を期待した注射剤 即効性を期待したお薬としては、セレネース・ヒルナミン・コントミン・ジプレキサなどが使われます。入院治療の場で活躍するお薬です。 それに対して外来の場では、持続性注射剤が使われることがあります。統合失調症では抗精神病薬を継続的に服用しなければならず、飲み忘れてしまうことが一番の再発リスクになります。 このため、一度注射をするだけで効果が持続するお薬が開発されています。 定型抗精神病薬としては、 ?ハロマンス/ネオペリドール(セレネースの持続性注射剤) ?フルデカシン(フルメジンの持続性注射剤) 非定型抗精神病薬としては、 ?リスパダールコンスタ(リスパダールの持続性注射剤) ?ゼプリオン(インヴェガの持続性注射剤) ?エビリファイ持続性水懸筋注用(エビリファイの持続性注射剤) これらは1カ月に1回(リスパダールコンスタのみ2週間に1回)、お尻か肩に筋肉注射をすることで効果が持続するお薬です。 最大のメリットは飲み忘れが防げることですが、お薬の血中濃度が安定するため副作用も軽減されます。ただし、薬価が高いお薬が多いというデメリットがあります。 〇抗認知症薬 コリンエステラーゼ阻害作用により脳のアセチルコリンを高め,認知症の中核症状とADLの改善効果がある. 教科書に書いてあるパーキンソン病という病気の解説には、必ずアセチルコリンとドパミンの天秤の絵の解説があって、ドパミンよりもアセチルコリンが過剰になっているとされています。昔は抗コリン剤がよく処方されていたほどです。コリンエステラーゼ阻害薬というのはアセチルコリンを増やす薬で、その真逆の作用です。アセチルコリンが過剰になっている状態にさらに上乗せする意味があるのか?ということになりますが、もし意味があるとすれば、それはドパミンを増やす薬を過剰に投与しすぎた場合に限られます。コリンエステラーゼ阻害薬を使おうと考える前に、まずはドパミンを増やす薬を減らすことを考えるべきだと思います。副作用が多くなるので。 ◇アルツハイマー病◇ まずアルツハイマー病とは進行性の知的機能低下や人格障害を伴う認知症の一種です。 抗アルツハイマー病治療薬は、大きく2つに分類されます。    ⅰ.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬    ⅱ.NMDA受容体拮抗薬 ⅰ.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の代表的なものとして    ・ ドネペジル(アリセプト)    ・ ガランタミン(レミニール)    ・ リバスチグミン(イクセロン) が挙げられます。 ※リバスチグミンは、国内初の貼り薬です。 ⅱ.NMDA受容体拮抗薬 NMDA受容体拮抗薬の代表的なものとして    ・ メマンチン(メマリー) が挙げられます。 ここで質問です。ドパミンを賦活する違法薬物は何でしょう? アンフェタミンですね。 アルツハイマー病薬をまとめるとこのようになります。 〇アルコール: GABA受容体には以下の3つがある ・バルビツレート→べゲタミンやアルコールでONに ・GABA ・ベンゾジアゼピン 頭打ち効果について ベンゾ:頭打ち効果あり(ポンピングブレーキ) AL:頭打ち効果ない(あぶない べた踏み) ベンゾでは死ねないけど、Alと一緒に飲むと、、致死率が高まる 説明:アルコールとベンゾは同じ部位(GABA?)に効くがアルコールの方が強い話 アルコールはベンゾ系と置換できる。ダウナー系でも多少置換えできる。ただし置換えだけでは問題解決にはならない。  〇メニルフェニデート徐放薬 ドパミン賦活。 発達障害の人には、メニルフェニデート徐放薬が有効の場合と、抗精神病薬のごく少量が有効の場合がある。 発達障害についてさわりに触れたいと思います。発達障害の人たちは外のラインが脆弱。内のラインは太い。メニルフェニデート徐放薬が有効です。tonic相のドパミン濃度を上昇させ、改善し、ドパミン遮断薬である抗精神病薬のごく少量が発達障害の人たちに一部有効なケースがあります。phasic相のドパミンを遮断すると改善される可能性が考えられます。抗精神病薬のさじ加減はとても難しいのです。      他者 刺激       ↓  ↑ ――――――――――――――――外のライン(細い)=phasic相ドパミン↑       ↓  ↑ ================内のライン(太い)=tonic相ドパミン↓ ⑩副作用 副作用とは、望ましくない作用の事。つまり、作用も、副作用も、作用です。 この図は、抗精神病薬の代表的な副作用です。言ってしまえば、これらすべて作用ともいえるんですね。 自律神経失調症 自律神経には昼間や活動しているときに活発になる「交感神経」と、夜間やリラックスしている時に活発になる「副交感神経」の2種類があります。 心と身体の状態を活発にする交感神経と、心と体を休ませる副交感神経がシーソーのようにバランスを取りながら働いているおかげで私たちの健康が保たれます。 向精神薬の副作用症状の多くが自律神経症状(安保‐福田理論より)なんですね。 自律神経のパランスから見れば、便秘も口渇も交感神経優位の状態です。また、減薬過程で様々な離脱症状に困っている 方々の症状もまた交感神経優位でもたらされる症状と見事に一致します。このことに気が付いてから、減薬中で様々な 不快な身体症状を伴う20名以上の方に病院で自律神経の指標である白血球の分画を調べて頂いたら、ものの見事に全員 交感神経優位の状態でした。離脱症状で一番多い訴えは不眠であるが、睡眠ももちろん副交感神経優位でもたらされるもの です。その他、向精神薬服用者は、自己免疫疾患(リュウマチ、橋本病、甲状腺異常、SLE)などの症状、QT延長や頻脈など の心疾患症状 、またパーキンソン症候群やアカシジアや遅発性ジスキネジアなどの神経症状、痛み等を訴える方が多数 いらっしゃいます。これらの症状も、交感神経優位でもたらされる自律神経症状として捉えれば説明可能です。 ストレスや薬物の長期使用により乱れる自律神経バランス(安保‐福田理論より) 自律神経のパランスは自血球の分画で測定可能  自律神経のパランスは、白血球の分画 (顆粒球とリンパ球の比率)を調べることで知ることが出来ます。これは、ごく普通の 血液検査項目で、どこのクリニックでも検査可能です。健康な大人で、平均で顆粒球が 60%、 リンパ球が35%となっています。 強いストレス状態にあるときや、薬物を長期使用すると、このパランスが狂うことになります。正常値の値は、リンパ球 35~ 41%の間、顆粒球が54~ 60%の間となります。リンパ球が30%を下回り顆粒球が65%を上回るようになると交感神経優位 ということになります。  人間は、運動や、生きるために必要な様々な活動は、日中に交感神経優位になることで行える訳ですが、逆に夜になると 副交感神経優位となり、ゆつくりと休養することにより、睡眠はもとより、解毒代謝作用も、また様々なホルモン分泌も 行われるということです。ずっと交感神経優位となるということは、いわば昼夜問わず常に戦闘態勢にあるということですから、 当然不眠となり、必要な栄養吸収もできず、病原菌などに対する免疫機能も低下するということです。また、人体に有害な 活性酸素の90%は 、交感神経優位の状態で増加する顆粒球が死滅するときに発生しますが、この代謝、無毒化も副交感神経優 位で活発になります。交感神経優位では、さらに血流が悪い状態ですすから、活性酸素の除去もうまくいかず、これが様々 な症状を生んでいると考えれば、向精神薬服用者の多岐に渡る副作用症状の説明は可能なのです。 白血球分画? リンパ球が15%x 30%だといい NK細胞がある ガンを食べる 別表 子供は副交感神経優位で育つ  子供は、副交感神経優位の状態で成長します。副交感神経優位の状態で子供は様々な細菌や毒物から身を守るようにできており、 成長の過程で様々な免疫を獲得していきます。副交感神経優位で発症する病気の代表が喘息やアトピーといったアレルギー症状です。 アレルギー反応は副交感神経配下での免疫系の過剰反応によって引き起こされます。小児ぜんそくやアトピーの多くが大人になると 自然に治るのは、成長すると大人の体が交感神経優位に切り替わるためです。また子供が良く寝るのは、成長に必要なホルモンが 分泌される為にも、知能が発達する為にも十分な睡眠が必要であるためです。そのためには副交感神経優位である必要があるのです。 ADHD治療で使用される覚せい剤(コンサータ、ストラテラ)は、強力な交感神経刺激剤ですから、常用すると成長が阻書されます。 結果としてこれらの薬を服用する子供は、同年代の子供に比べ身体の成長が遅れると共に知能の発達も遅れ、交感神経刺激による イライラや攻撃性が現れるのは、交感神経が人工的に刺激されることになるからです。  子供が健全に育つためには、夜には安心して良く睡眠がとれ、ゆっくりと食事を採る環境が必要で、昼には活発に遊ぶことで、 様々な免疫を獲得し、丈夫な大人へと成長するということです。いわゆる思春期とは自律神経パランスが子供から大人に変わる過程です。 思春期の問題の多くは、病気ではなく、まさに大人になるめの正常な反応に過ぎません。成育環境に問題がなければ待つことも重要です。 別表 産後うつの正体  女性が妊娠をすると、女性の体は胎児の成長につれて、より多くの栄養を運ぶために、血流を高めるように 徐々に交感神経優位に変化していきます。妊娠後の女性の体に変化は、自律神経バランスの変化ということ もできます。  出産を迎えると、女性の体からいきなり胎児が居なくなります。この際、出産した女性は、目的の胎児が居 なくなるにも関わらず、交感神経優位の状態にさらされることになります。この交感神経優位の状態から、元に 戻るためには約1か月必要となります。この間、十分な休養を取ることが出来なければ、中々、交感神経優位の状態が解消 されないということになります。産後の肥立ちが悪いというのも、この交感神経優位の状態が続くことといえます。 少なくとも産後 1か月は、周囲のサポートの元で十分に休養することが、自律神経バランスの回復に必要です。  こうした産後の女性にとっては当たり前の不調を『産後うつ』と捉え、交感神経優位に誘導する抗うつ薬や抗 不安薬を投与することは、自律神経のパランスをさらに悪化させることになります。 自立神経バランスを整える  自律神経バランスを整えることは、あらゆる難病の解決の糸口になる可能性があります。病気になったから自律神経のバランスが 崩れたのか、自律神経のバランスが崩れたから病気になったのか、これは鶏と卵の関係と同じで、ともに真なりです。  栄養療法を用いた治療は、特に神経系の疾患に対して有効ですが、それも腸がきちんと栄養を吸収し、各種ホルモンが分泌されたり 生成されたりする必要があります。栄養が吸収されることも、ホルモンの分泌、生成も副交感神経優位でしか行われません。 副交感神経優位にする薬剤はありますが、そうした薬剤は、一時的に効果があっても、人体は代償的に自分で自律神経バランスを 整える力を失います。それゆえ、自律神経バランスを整えるためには、人体の持つ治癒能力に頼らざるを得ません。  副交感神経優位に持っていくためには、まず体温が上がらねばなりません。冷え性の女性が、様々な婦人病、がんに罹りやすいのは、 やはり交感神経優位で体温が低いからです。まず冷え性を改善する方策が重要です。体温が36.5位の方は副交感神経優位なのです。 半身浴や低温サウナなどが有効です。  漢方や鍼灸も有効です。ただし、漢方も薬ですから、当然、交感神経優位をもたらすものもありますので、注意が必要です。 また針治療においても、局所的に効果があるツボは交感神経を刺激し、全身に効果のあるツボは副交感神経を刺激するようです。 漢方や針治療を行う場合には、このあたりに注意する必要があります。  そして何より、交感神経優位になる最大要因はストレスです。また交感神経優位の方は非常にストレス過敏になっています。 したがって、ストレスなくゆっくりと静養できる環境や直面している問題の解決が重要です。 認知症 ?薬剤は酸化し活性酸素を作り、たんぱく質を傷つける 組織被害といい、胃潰瘍などもそう 傷ついた神経細胞は、新しく神経を作り直すしかない(基本的に治せない?) 顆粒球は4,5年で65→80%に上がる 高いと活性酸素↑認知症にも 依存性 ベンゾは世界一 暴力 記載通り 脳委縮 本当です ⑪副作用(抗精神病薬) 一目で見るとこんな感じです。 詳しく見るとこんな感じです。 これじゃわからないので、詳しく解説していきますね。 抗精神病薬の代表的な副作用をまとめると、 ?錐体外路症状(EPS) ?高プロラクチン血症 ?口渇・便秘・巨大結腸症 ?ふらつき ?眠気 ?過鎮静 ?誤嚥性肺炎 ?体重増加 があげられます。 そして頻度はそこまで多くありませんが重篤な副作用として、 ?悪性症候群 ?遅発性ジスキネジア ?麻痺性イレウス ?アナフィラキシー ?けいれん ?無顆粒球症 ?不整脈 などがあります。 また、あまり語られない副作用として、 ?高齢認知症患者への抗精神病薬投与により死亡率は1.6~1.7倍高くなる(FDA2005及び2008) ?BPSDを抗精神病薬で治療すると死亡率が上昇します。 BPSDという概念は30年前は存在していませんでした。 認知症を社会が治療のターゲットとした歴史があります。 ?アンドリアセン アントリアセン? 年に1%ずつ脳が縮む 15~20年寿命が縮む SCの薬 Alと同じ ?薬剤は酸化し活性酸素を作り、たんぱく質を傷つける 組織被害といい、胃潰瘍などもそう 傷ついた神経細胞は、新しく神経を作り直すしかない(基本的に治せない?) 対処:ハマロクロウ先生いわく、ビタミンCのDIVが有効 リンパ球が活性酸素を除去するので、副交感神経を優位に保つことも大事 多分、抗酸化作用のあるケトンタイなども有効? 岩盤浴などのデトックスは原因に対処している 子供はタンパク質を成長させる過程にある為リスキー ?統合失調症らしくなる処方一ドパミン遮断- 抗精神病薬の投与はドパミンのバランスの崩れを回復し症状を安定させます。しかしドパミンの過剰が認められない人に、精神症状があるからといって抗精神病薬を投与すると、ドパミン遮断による陰性症状をはじめ、さまざまな精神疾患を惹起する可能性があるのです。 ある精神科医が精神の不調を訴える人を診察し, 統合失調症かそれ以外の 精神疾患か迷ったとき,治療的診断の目的で抗精神病薬を投与したと仮定し ます。この人の脳内の神経伝達物質が正常であった場合はどうなるでしょう か、次の診察で患者さんは抗精神病薬により眠気や活動性の低下,思考停止 を訴えるかもしれません.そうしたらその精神科医は, この患者さんはやっ ぱり統合失調症だったと結論付けるでしょう. おまけに症状がコントロール できていないので, さらに抗精神病薬が追加され, ますますこの人は統合失調症らしくなっていく危険性があります。 しかし多くの精神科医は妄想の本 質を見抜く技術をもっています. ドパミン過剰による妄想とドパミン過剰を 認めない妄想様訴えを区別する技術です. 抗精神病薬が有効であるのは、ド バミン過剰による妄想の連鎖です.脳内の病態を臨床症状から推測すること が大切です。 ①錐体外路症状(EPS) 錐体外路症状は、ドパミンを過剰にブロックしてしまう副作用のひとつです。 脳の錐体外路の一つである黒質線条体という部分では、身体の運動の細かな調節を自動で行ってくれています。これには黒質で作られるドパミンが重要な働きをしているのですが、抗精神病薬によってブロックされてしまいます。 これによって運動調節がうまくいかなくなってしまい、錐体外路症状(EPS:ExtraPyramidal Symptom)となります。 同じように黒質の神経細胞が変性してしまってドパミンが作れなくなってしまう病気に、パーキンソン病があります。錐体外路症状は、パーキンソン病に似た症状が出現します。 錐体外路はそれ以外にも運動制御系を包括しています。だから錐体外路症状も1つではありません。 ?薬剤性パーキンソニズム(ふるえ・不随意運動・筋肉のこわばり) ?アカシジア(ソワソワして心身が落ち着かない) ?急性ジストニア(筋肉の異常な収縮、姿勢異常) ?ジスキネジア(勝手に身体が動く) ?カタレプシー(受動的にとらされた姿勢を保ち続け、自分の意思で変えようとしない状態) いずれも不快で、アドヒアランスの低下、断薬の原因になります。 あまり語られないアカシジアの話 出現しやすい薬剤 CP換算について 統合失調症に効果のあるD2受容体占有率は70~80%であることが判明しています。 また錐体外路症状(パーキンソニズムの初期症状)は、D2占有率75%以上から発生することが判っていま セレネース(マックス12mg)は4mgで半数の患者にアカシジアが出る エビリファイでももっと出るという人もいる 実はエビリファイが一番パーキンソニズムが出る? エビリファイは宣伝とは反対 ドーパミン7割遮断するとパーキンソニズム出ると定義 リスなどは40%に設定されている 人によってどれがよいか違う CP換算の落とし穴 CP換算はD2受容体親和力のことですが、問題としては、5HTやHなどの力は無視されていることにあります。 抗精神病薬には、統合失調症に効果があると言われているD2受容体以外の受容体にも親和性が高いものがあることが判ります。 これが抗精神病薬の多彩な副作用の原因です。オランザピン(ジプレキサ)は、眠気や肥満が主要な副作用ですが、これは、 この薬の強力なヒスタミン受容体との親和性によります。 この受容体との親和性を念頭に、各薬剤の副作用情報を見ると、 見事に相関していることが判ります。 また、抗精神病薬が不適切に使用されると、身体副作用だけでなく精神症状も出現することが判ります。 受容体プロフィールを見れば、処方内容からある程度の副作用の出現を予測することも可能です。 逆に、ある程度、副作用症状を引き起こしている原因薬の特定をすることも可能です。 医師はあらかじめそれを推測し、薬の限界も認識しながら、薬を処方する必要があるということです。 錐体外路症状への対処法としては、5つあげられます。 1.お薬の減量 2.抗不安薬やβ遮断薬の追加 3.抗コリン薬の追加 4.他の抗精神病薬へ変更 まずは可能であれば、お薬を減らしていきます。効果を見ながら、少しずつ減量していきます。 5.血中濃度のピーク幅が大きい場合EPSが出現しやすくなる。(EPSの出現と効果の減弱は血中濃度の変動幅と関連するという仮説)動物モデルにおいて抗精神病薬の血中濃度が大きく変動するとより強いカタレプシーが起こることが確認されています。 ピーク幅が少なくなるような技術・血中濃度を一定にする方法はLAIです。LAIは注射による徐放剤です。内服薬よりもピーク幅が少ないと考えられています。経口製剤の徐放化も脳内濃度の安定化に有効です。パリぺりドンが該当します。約23時間徐放化により幅を小さくすることに成功しています。 減量が難しい場合は、抗不安薬やベータ遮断薬によって和らぐことがあります。不十分であれば、抗コリン薬で緩和していきます。 抗コリン薬としては、 ?アキネトン(ビペリデン) ?アーテン(トリヘキシフェニジル) ?ピレチア/ヒベルナ(プロメタジン) ※抗コリン作用のある抗ヒスタミン薬 がよく使われます。しかしながら、副作用止めによる副作用(便秘・口渇・尿閉・せん妄など)も考慮する必要があります。 効果との兼ね合いになりますが、錐体外路症状が少ないお薬に変更していくこともあります。   ②高プロラクチン血症 高プロラクチン血症も、ドパミンを過剰にブロックしてしまう副作用のひとつです。 ドパミンは下垂体にあるプロラクチン分泌細胞膜上のD2受容体に作用し、プロラクチンの産生・分泌を抑制しますが、抗精神病薬で下垂体のドパミンを遮断することで、プロラクチンというホルモンを増やし、高プロラクチン血症を起こします。 それによって女性では、 ?母乳がでる(乳汁分泌) ?生理が遅れる(エストロゲン/テストステロン分泌阻害・生理不順) ?不妊の原因となる(ゴナドトロピン放出ホルモン分泌阻害・無排卵・無月経) ?胸がはって痛い 男性では、 ?胸がふくらむ(女性化乳房) ?性欲が落ちる(性機能低下) といった副作用がみられます。 プロラクチンは本来、授乳中の女性で分泌されているホルモンです。授乳のときは次の出産をする余裕がないので、排卵を抑制して妊娠しないようになっています。 抗精神病薬でもプロラクチン値の上昇の仕方が異なります。 D2受容体への親和性が高いリスペリドンはプロラクチン値を上昇させやすいのですが、半減期を経て戻ります。ペロスピロンも値をかなり上昇させますが、半減期が短いので戻ります。ブロナンセリンは脂溶性が高く脳内のD2受容体遮断の方が血液脳関門の下垂体でのD2受容体遮断より強いため上昇しにくいと言われています。クエチアピンはD2受容体への結合が緩いのでプロラクチン値上昇が少ないです。アリピプラゾールはD2部分作動薬ですがプロラクチン値を低下させる可能性があります。プロラクチン値低下の副作用は性的逸脱などがあります。LAIは血中濃度のピーク値を下げることが可能になるため、リスペリドン内服薬よりプロラクチン値の上昇が少ない可能性が言われています。 プロラクチン値は脳内のD2占拠率より、抗精神病薬の血中濃度(血中半減期)で値が変動します。また、D2受容体への結合力だけでなく、結合時間がプロラクチン値の変動に影響します。 高プロラクチン血症の対処法としては、 ?お薬の減量 ?他の抗精神病薬へ変更 となります。 ③口渇・便秘・巨大結腸症(抗コリン作用) 精神科薬物療法で不快に思うことは「便が出にくい」が上位にランクします。 腸管は多数のリンパ装置がある免疫臓器でもあり、各種の生理活性物質(サイトカイン)が分泌され、その多くは脳へも情報を伝えていますが、これを脳腸軸といいます(ストレス学説などの脳から消化管への信号を古典的脳腸軸といいます)。お腹の調子が脳機能や気分と関連する可能性があります。 向精神薬の服用後に生じる様々な副作用症状の内、もっとも知られているのは、抗コリン作用を持つ向精神薬によって引き起こされる便秘や口渇。 抗精神病薬は、アセチルコリンという物質が働くムスカリン受容体をブロックしてしまうことがあります。アセチルコリンの働きを邪魔するので、抗コリン作用と呼ばれます。 アセチルコリンは副交感神経の働きを伝える物質です。ですから抗コリン作用は、副交感神経の働きを邪魔された時に認められる症状になります。 つまり、「リラックスできない時はどういう身体の状態か?」をイメージすると理解しやすいです。副交換神経は全身で色々な役割をしているので、これをブロックするのは一番厄介です。末梢性では、胃腸の働きは抑えられるので、便秘や(尿閉)尿が出にくくなります。(口喝)口も渇いていてしまいます。中枢性では、認知機能が低下します。 こういった便秘や口渇といった抗コリン作用への対処法としては、4つあげられます。 1.生活習慣の改善 2.お薬の減量 3.下剤や漢方などの追加 4.他の抗精神病薬へ変更 生活習慣で改善できることは取り組んでいきます。それでも改善しない場合は、お薬の減量になります。 しかしながら効果との兼ね合いで減量できないこともあります。その場合は下剤や漢方薬などで症状を緩和していきます。どうしても合わない場合は、他のお薬に変更していきます。 巨大結腸症の機序 抗コリン作用により腸管の運動機能が低下し、糞塊が腸管内に停滞すると、糞塊により腸管壁が物理的に伸展され続け、腸管平滑筋の断裂が起こり筋層が薄くなります。筋層内には長官の運動を司るアウエルバッハ(Auerbach)神経叢があり、その変性が起こるためますます腸管の蠕動が低下する悪循環が起こるのです。 巨大結腸症の予防 ①抗コリン作用の強い抗精神病薬を複数併用しない ②抗パーキンソン病薬を長期にわたり併用しない ③排便習慣をつける ④適度な運動をする ⑤食事を規則正しく摂り食物繊維をバランスよく摂取する ⑥腸内環境を整える 医薬品添付文書には、これらの症状が出れば薬を減らすか止めるように 記載されているが、多くの場合副作用止めとして便秘薬が処方され投薬は継続されることも多く、これらが進 めば、さらにイレウスや水中毒といった重篤な症状に陥る場合もあります。 ④ふらつき 抗精神病薬のいろいろな作用が重なり、ふらつきが認められることがあります。 とくに血管の調節を行っているアドレナリンα1作用の影響が大きいです。脳に血液がうまくめぐらなければ、くらくらしてふらついてしまいます。いわゆる立ちくらみは、この作用によるところが大きいです。 ふらつきが認められた場合の対処法としては、4つあげられます。 1.生活習慣の改善 2.お薬の減量 3.昇圧剤の追加 4.他の抗精神病薬へ変更 生活習慣でできることとしては、 ?朝食を抜いている方は、しっかりととるようにする ?立ち上がる時はゆっくりと身体を動かす 以上のようなことがあります。改善がない場合は、可能であればお薬を減らしていきます。 メトリジンやリズミックといった昇圧剤を使うこともあります。合わない場合は、他の抗精神病薬に変更します。 ⑤眠気 眠気の副作用もいろいろな作用が重なって生じますが、抗ヒスタミン作用の影響が大きいです。 抗ヒスタミン作用とは、風邪薬や花粉症のお薬を服用してきたときの眠気になります。ヒスタミンは脳の覚醒状態に大切な脳内物質ですので、これがブロックされることで眠気が生じます。 それ以外にも、 ?セロトニン2A受容体遮断作用 ?アドレナリンα1受容体遮断作用 などが関係しています。 眠気が認められた場合の対処法としては、4つあげられます。 1.睡眠環境や習慣を見直す 2.お薬の減量 3.飲み方を工夫する 4.他の抗精神病薬へ変更 しっかりと睡眠がとれることで眠気が薄れることもあるので、睡眠環境や習慣に関して改善できることがあれば見直していきます。詳しくは、「睡眠薬について」をお読みください。 可能であれば、お薬を減量していきます。就寝前や夕食後に服用するなど、飲み方の工夫でうまくいくこともあります。合わないようならば、他の抗精神病薬へ変更します。 ⑥過鎮静 多剤併用によるD2受容体遮断、H1受容体遮断、α1受容体遮断が過鎮静を起こします。 H1受容体遮断が強いのはクロザピンやクエチアピン、オランザピンなどです。α1受容体遮断が強いのはリスペリドンやブロナンセリンなどです。 ⑦誤嚥性肺炎 1つ目の機序はドパミン遮断による錐体外路症状に関連した「むせ」です。 2つ目の機序は嚥下反射の低下による不顕性誤嚥です。 3つ目の機序は抗コリン作用による食道拡張、食塊逆流に関連した誤嚥性肺炎です。 ⑧体重増加 抗精神病薬は、体重増加してしまうことが比較的多いお薬になります。 ?ヒスタミンH1受容体遮断作用 ?セロトニン2C受容体遮断作用 などによって、食欲が増加してしまいます。 それだけでなく、代謝への悪影響があることが分かっています。マウス実験では、同じカロリーの餌を与えても肥満になりやすいです。このため、食べている以上に体重増加してしまいます。 非定型抗精神病薬の方が代謝への悪影響は大きく、特にMARTAのジプレキサ、クロザピン、セロクエルで注意が必要です。糖尿病の患者さんには、この2つのお薬は禁忌となっています。 メタボリック・シンドロームの有病率は、アメリカのデータでは、単剤治療で約35%であるのに対して、2剤以上では約50%です。メタボリック・シンドロームの重症度は、抗精神病薬のCP換算量には関連しませんが、抗精神病薬の剤数とは相関するというデータもあります。 お薬の減量が可能であれば、それによって食欲が落ち着くこともあります。お薬によっては量とは関係なく、問答無用で体重増加してしまうことがあります。改善が難しければ、他のお薬に変更を考えていきます。 体重増加が認められた場合の対処法としては、4つあげられます。 1.体重測定・食事管理 2.運動 3.お薬の減量 4.他の抗精神病薬へ変更 まずは体重を測定することが大切です。食生活を整えることから始めましょう。運動なども取り入れながら、体重をコントロールできればそれが一番です。 ⑨その他の副作用 抗精神病薬には、頻度は多くないものの重篤な副作用もあります。具体的には、以下のようなものがあげられます。 ?悪性症候群 ?遅発性ジスキネジア ?麻痺性イレウス ?アナフィラキシー ?けいれん ?無顆粒球症 ?不整脈 これらのうちで、比較的多いのが悪性症候群です。筋肉が硬直してしまい、話しづらくなるといった神経症状が認められます。発熱や自律神経症状などが認められ、腎不全などから死に至ることもあります。 悪性症候群 原因はいまだに完全には解明されていませんが、ドパミン遮断が原因とされる説が有力です。ドパミン遮断は、抗精神病薬の急増時、抗パ剤の急な断薬時、多剤併用による代謝阻害でリスクが高くなります。 症状 錐体外路症状と自律神経症状が出現する。その1割近くが生命に影響を与えるほど重篤化し致死的です。3大症状は高体温、筋強剛と振戦、高CK血症ですが、診断基準に合致する症例ばかりではありません。頻脈、頻呼吸、発汗、血圧異常などの自律神経症状、無動、混迷、せん妄などの意識レベルの変化も起こりやすく、症状が幅広いため「抗精神病薬を内服している患者さんは常に起こりうる症候群」と認識しておくことが大切です。 心突然死(QT延長) 危険な不整脈である心室性不整脈が起こりやすくなることもあります。 QT延長とは脈拍で補正したQTc間隔が0.44秒以上に延長したときと定義されます。かつ徐脈傾向であると、不整脈を経て、心室細動へ移行します。心室細動はすぐさま除細動をしなければ心停止になります。 代謝が阻害されると危険性が増しますが、例えば抗精神病薬に、抗うつ薬、マクロライド系抗菌薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬が併用された場合、P450(CYP)の阻害によりQT延長のリスクが増加します。 QT延長の段階で減量を考える必要があります。 また、心電図をとってQT時間を測定することで、このような不整脈の起こりやすくなっていないかを確認していく必要があります。 長期間にわたって抗精神病薬を使っていると、遅発性ジスキネジアという不随意運動(勝手に身体の一部が動いてしまうこと)が生じることがあります。 抗コリン作用が強すぎると腸が動かなくなってしまって、麻痺性イレウスが認められます。 どのようなお薬でもありますが、アナフィラキシー(アレルギーによる血圧低下)も起こりえます。 けいれんしやすくなってしまったり、血を作る細胞の働きが抑制されて無顆粒球症になることもあります。 あまり語られない話 抗うつ薬の副作用 注意するべきSSRIの副作用 SSRIを使用するとセロトニン・ドパミン神経系のバランスが再び崩れ、初期の消化器症状だけでなく、セロトニンが増えることでのイライラなどの精神症状、減量中止するときの離脱症状などが出現する可能性がありたす。また、まれですがセロトニン症候群の危険性もあります。SSRIはチトクロームP450(SYP)を介して、抗精神病薬と競合し、抗精神病薬の血中濃度を上昇させる可能性もあります。薬物相互作用の問題も考慮しなければなりません。どの薬でも、神経伝達物質の微妙なバランスが崩れれば精神症状を惹起する可能性があります。 セロトニン症候群  セロトニン系に作用する薬物の過剰投与、相互作用によって、セロトニン神経系の活動性の亢進によって生じる。自律神経症状、精神症状、神経筋症状が生じるが、全ての患者でこれら全てが表れるのではない。診断基準となる症状として、焦燥、混乱、軽躁、発汗、下痢、発熱、震え、反射亢進、協調運動障害、ミオクローヌス、眼振、振戦がある。重篤な場合には強直間代発作、多臓器不全、播種性血管内凝固、横紋筋融解、昏睡、死に至る場合もある[35]。 SSRI賦活症候群(アクティベーションシンドローム) ・希死念慮のあるうつ病患者を賦活 ・うつ病が逆に悪化 ・アカシジア (強い焦燥と運動不穏) ・パニックと不安 ・躁鬱 ・不眠 ・強迫的な自殺へのとらわれ ・敵意を伴うボーダーライン状態 ・脳波活動の変容 抗うつ剤の長期投与で生じる問題 ・逆説効果 (うつの悪化) ・双極性障害における抗うつ剤誘発性スイッチ 次表は、抗うつ薬の自殺関連副作用の実際の報告数です。抗うつ剤に自殺関連副作用が多ぐ報告されていることが分かります。 別表 x 抗不安薬の副作用 ・催眠作用による眠気 ・筋弛緩作用によるふらつき ・耐性形成による身体依存と離脱症状 +aの知識 ⑭副作用 レギュレーション デカルト「人体は精巧な時計である」 向精神薬、インスリン、ステロイド、甲状腺ホルモン剤、ピル、抗ガン剤の一部およびマイナーなホルモン剤など、ホルモンに関する薬剤はアップレギュレーション及びダウンレギュレーションが発生します。 最初は作用します。 継続的に投与すると受容体の数が減ってしまいます。(ダウンレギュレーション) 今度はホルモンの分泌量が低下 そのホルモン剤を打たない限り、ずっと調子が悪いという状態になります。 グラフ さらにそのホルモン剤を打っていても調子が悪かったり、禁断症状が出たり、後遺症が出たり、頭や体が悪くなっていきます。 アップレギュレーションがドーパミン濃度上昇に転ぶのか、ドーパミン減少に転ぶかは分からない ホメオスタシスともいう アップレギュレーションとは、それらの神経ホルモンや信号が減少することで、受容体の数が増加し、感受性が過敏になることである。 ダウンレギュレーションとは、過度な神経ホルモンまたは継続的な刺激信号により、受容体の減少や、感受性の低下を生じ、神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が低下することである。 例えば、身体・精神依存の強いベンゾ系の薬物依存の場合はGABA※/ベンゾジアゼピン受容体にダウンレギュレーション(応答機能低下)が起きているとされている。ダウンレギュレーションしている状態で内服をやめてしまうと、GABAが受け取れなくなり、何とか受け取る受容体の感受性を高めようとする。そのホルモンバランスの混乱がかなりの苦痛を感じるために、禁断症状(神経過敏・幻覚・興奮状態)が出やすくなる。 グラフ 原因薬 対処法 レギュレーションを調整 入院施設があればいきなりやめることも不可能ではありませんが、基本は漸減法でやることが重要 アップレギュレーションによる受容体の調整(減少)は6ヶ月かかる 画像診断可 至適最小用量 ⑮副作用 離脱症状 離脱症状とは ある一定期間(個々の体質によって期間は異なる)の継続使用後に中止をした際、服薬者の耐性の進行により様々な禁断症状を発現させるケースがあり、その心身の不調が離脱症状と呼ばれている。抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬をはじめ、血圧下降薬やステロイド薬といったホルモンに影響する薬剤にもこうした症状は報告されている。 離脱症状は多岐に渡るが、中でも摂取薬剤の最も特徴的な作用と逆の症状が強く現れる傾向がある。例えば、筋弛緩作用が強いものでは筋硬直、抗不安作用が強いものでは強い不安、催眠作用が強いものでは不眠等。 グラフ 抗不安薬の離脱症状のリスト 精神症状:不安・恐怖感・ポジティブな感情の喪失・気分の急激な変化・無感情・孤独感・見当識の障害・希死念慮・対人恐怖・疲労感の喪失・被害妄想・記憶障害・抑鬱・思考障害・気分の急激な変化・不眠・イライラ、焦燥感・ネガティブ思考のスパイラル・自尊心の異常な低下・異常に神経質・離人感・激昂・強迫観念・過食、拒食・不快な記憶のエンドレスなフラッシュバック・パニック発作・対物恐怖・幻覚、幻聴 身体症状:筋肉の痙攣・緊張・硬直・痛み・幻覚、幻聴・背中、頚椎の凝り・痛み 頭痛・バランス失調・発汗・皮膚のトラブル・口腔内のトラブル・目の異常・アレルギー、免疫系の問題・生理の異常、性的障害・血圧、血糖値の異常・感覚異常・呼吸器の異常・不随意運動、アカシジア・感覚過敏・聴覚、嗅覚、味覚異常・胃腸症状・胸痛、動悸・倦怠感、微熱、目眩・神経痛、頭痛・体温調節の困難 対処法1 様々な精神病に近似した症状・身体症状が発現する為、離脱症状との診断を受けられないケースがあり、その場合は逆に増薬となってしまう事がある。そのリスクを避ける為にも、向精神薬の減薬・断薬においては特別のプロセスを要す他、先ず離脱症状に留意する事が重要なポイントと言える。 対処法2 臨床効果は3本の矢で表現される。薬の効果、忍容性、服薬継続率。これらの3本の矢が揃うと鬼に金棒で、抗精神病薬の薬理学的作用が最大に発揮され、欠損すると悪化する。 →怠薬や自己判断により離脱症状を起こす可能性がある。 →服薬指導、服薬アドヒアランスが重要 対処法3 受容体プロフィールは、減薬やスイッチング時の離脱を予測するときにも役立つ。さまざまな受容体に作用する薬はMARTAとよばる。MARTAを減量すると離脱が起こりやすいことが理解できる。D2受容体の親和性が高い抗精神病薬から結合が低い抗精神病薬にスイッチングするときはD2受容体の離脱が起こる。たとえばアリピプラゾールからクエチアピンへのスイッチングなど。 分布 ・血中ALBに結合し脳関門を通過する。(血中ALBから)遊離した1/10の薬しか作用しない。代謝も遊離した分しかされない。 ・受容体親和性が高い薬剤は離脱するまでタイムラグがある。 ・脂肪は3年で入れ替わると言う説 ?クリアになる ?ならない? 離脱症状の種類 1,2,3 薬剤別離脱症状 ここ看護で重要 ⑯副作用(動的平均) 統合失調症らしくなる処方―動的平衡― レギュレーションに関連した精神疾患の可能性 抗精神病薬は統合失調症患者さんの症状改善には有効な薬です。あるいは双極性障害の一部の患者さんには有効です。しかしそれ以外の病態には、ほとんど効果がありません。抗精神病薬は統合失調症や双極性障害以外の患者さんにも多用されています。認知症の BPSD,手術後のせん妄,発達障害での精神症状,うつ病での精神症状,分類不能な精神病での精神症状など、ありとあらゆる精神症状に多用されています。だから米国では売上が一番多い医薬品なのです。その大多数は適応外使用(off-label use)でしたね.そして適応外使用に関して、抗精神病薬が著効していると多くの精神科医は誤解しているようです。他に方法がないから抗精神病薬が使用される場合もあり,患者の苦痛を除去する現実的な観点があればまだ理解できます。そういう場合の処方を否定しているのではありません。しかし奇妙に思いませんか.薬理学的に有効性が説明できないのに,臨床的にはとりあえず有効であると錯覚しているわけで,とても科学的ではありません、上記に挙げた適応外使用の疾患群はドパミンの過活動が推測される病態ではありません.なのに,なぜ抗精神病薬が効果を示すのでしょうか.1つには抗精神病薬のドパミン遮断で,患者の全体的な活動性が低下し,精神症状が消えたのではなく表現できなくなった可能性が考えられます。しかしこれはすでに不適切なドパミン遮断の範略に入ります。抗精神病薬を適正に使用していないので誤診です。一定の頻度で重 大な副作用が出現するでしょう.たとえば認知症の BPSD に抗精神病薬を使用すれば,投与を受けない認知症の人に比べて約2倍死亡率が上昇するなどです。 簡単すぎる(やや安易な)薬理学的推測をしてみましょう.精神症状を示す患者さんで,ドパミン濃度が正常である分類不能な精神疾患の患者さんを想定します。この患者さんの精神症状に対して抗精神病薬が投与されたとします。当初はドパミンの低下による鎮静作用だけで,抗精神病効果は示しません、ドパミンが低下するので精神症状を表現する力が奪われ,症状は少し第2ページだけ落ち着いたようにみえるかもしれません.抗精神病薬が投与されつづけると、抗精神病薬で正常のドパミン受容体が遮断され,内因性ドパミン(自分の体内にあるドパミン)がドパミン受容体を求めて紡復うことになります。あふれたドパミンは,患者さんの身体にはドパミン受容体が不足していると 感知し信号を発するでしょう.その結果ドパミン受容体蛋白の mRNA が活性化され,ドパミン受容体蛋白が作られるはずです.ドパミン受容体が増え。ドパミンの異常伝達が起こる可能性が指摘できます。そして統合失調症様の精神症状が現れるかもしれません.引き続き抗精神病薬の投与が行われ,ドパミン神経伝達がコントロールされ,抗精神病薬は抗精神病効果を示したと誤解されます。分類不能な精神疾患は,晴れて統合失調症と診断されるのです。これは薬理学的には,ドパミン受容体のアップレギュレーションと言われる現象です。機能を妨げると,機能を維持するために妨げられた受容体を増やして対応する現象です。薬が体内に入れば,間違いなく何らかの反応を起こします。のような単純な図式だけで身体全体が制御されているわけではありません。しかし生体の基本的な機能に,何か刺激が加わればそれをどう にかして,平衡状態にする機能があります。ホメオスターシスを保つ機能です。生命の本質的な機能であり,近年は「動的平衡」という概念で説明されています。抗精神病薬が投与されたら,それが体内にある状態で平衡状態ができあがります。この時点での動的平衡が完成すると,人体はあたかも抗精神病薬が体内にあることが当たり前であるかのような振る舞いをします。動的平衡では時間をもとに戻すことはできません.1秒前の自分は,動的平衡からすれば、すでに異なる自分でしかありません.抗精神病薬が人体に投与されたら,抗精神病薬が存在することで平衡を保つ自分が存在するのです。関係性の上に成り立つのが動的平衡です。抗精神病薬の投与は,抗精神病薬と生体との間に不可分な関係ができることを理解しておく必要があります.脳内の病態が統合失調症なら(ドパミン過剰なら),これでバランスがとれますが、そうでなければ違った平衡状態に落ち着くはずです。生体は「常に変化しながら安定を保つ機能」 があるのです.もし必要でない抗精神病薬が投与され続けたとしたら,生体は動的平衡を保つ機能を総動員して新たな自分を作るはずです。だからそこで現れる精神症状は,すでに新しい精神症状であり, もとの精神疾患を推測することを非常に困難にします。 誤診に気付きにくいのは, 時々刻々と動的平衡は更新されることが一因です. 抗精神病薬を不適切に長期間投与すれば, 精神疾患らしくなる可能性があります。この現象は抗精神病薬に限った話ではありません.漫然と投与されているベンゾジアゼピンや抗うつ薬にもそのリスクがあります。 ベンゾジアゼビンの依存や SSRI による精神症状は,分類不能な精神疾患を数多く作り出しています。そして最後には, さまざまな精神症状が運然と現れるので,やっぱり統合失調症だったのかという診断にたどり着く可能性があります。 精神科医の「予言」はまさに的中するのです。 ⑰減薬・単剤化の意義 わが国での抗精神病薬の量の問題として、多剤大量療法による健康影響が懸念されています。たくさんの抗精神病薬を、それぞれ最大用量近く多めに服用していると、心血管系の障害が生じやすく、突然死につながるという報告があります。 これを防ぐためには、   ①定期的に採血検査や心電図検査、体重・血圧脈拍測定    などを行うこと、   ②症状が安定した後であれば、できるだけ薬の量や数    を減らす「減薬」にトライすること を行うことが望まれます。 ドーパミン受容体ブロック頭打ちのPET写真 準備中 ドーパミン受容体ブロックには頭打ち効果があり、多剤の意味はないとされています。又、抗精神病薬は単剤での研究結果はあるが多剤での研究はなく、多剤処方のほとんどが臨床経験的に、又は実験的に処方されているのが現状であり、はっきりいって何が起こるか分からないんですね。 ⑱減薬する患者の看護 減薬の種類 直接法:断薬 隔離下で行う 日本では麻薬離脱で行う 漸減法:一定期間毎に一定量の薬を段階的に減らしていく 置換法:短時間作用型の薬を長時間作用型のものに等価換算の上置き換えていく 減薬の注意点☆大事 抗不安薬(BZD)…不安発作。自我を保つため会話は通じ理解は可能。その分、苦しみを自覚するため、苦しみが一番大きい。 抗精神病薬(定型/ 非定型)…幻覚、混乱。会話不成立。苦痛を覚えていない。ARPは時間差に注意。 抗うつ薬(SSRI/ SNRI)自他殺、暴力。二次曲線的な血中濃度となるので減薬量に細心の注意。 抗てんかん薬(CBZ/ VPA)…てんかん重積発作! 抗パ薬…パーキンソン症状、アカシジア、消化器症状。通常メジャーと同時に減らす。 減薬・断薬の原則 減薬はコツがありますので、担当医と相談しながら慎重に行う必要があります。自分一人で調整したらだめってことですね。  向精神薬は急激に減らすと離脱症状が強く出るケースが多く、ゆっくりとした漸減が安全とされています。血中濃度半減期の短い薬剤は、服薬中に離脱症状と副作用の両方が起きてしまうリスクがあり、抗不安薬であれば長時間作用型のジアゼパム(セルシン・ホリゾン)への置換を行ってからゆっくりとした漸減へと入る方法がアシュトン法では推奨されています。この他、漢方・ムードスタビライザー等を補助的に用いるケースもあります。 減量は1/4ルール 1/2が壁 とりあえず全部半分減らすという方法 1つずつ半分にして今辛いものの原因薬を調べる方法 やめやすさが薬剤により異なる     低力価 CP 50mg 20mg 新薬 1mg 6mg 0.2mg 0.5mg 2mg     高力価   カルバマゼピン…他の薬の影響を弱めていたり、他の症状を消してくれているので、最後に減らす。 ベンゾ:長期作用型メイラックスかセルシンなどに置き換えるのが主流(アシュトンマニュアル) 断薬を栄養学からアプローチする方法もある。 コツ(Dr向け) 1,服用している全ての薬を把握する。 2,向精神薬を分類する。 3,単剤化する中心的薬剤を設定する。 4,アッパー系(興奮作用)、ダウナー系(抑制作用)別に分類する。 5,主訴の整理。 6,副作用の分析。 7,減薬ミリ数を計画   8,減薬順番を計画。6を参考に。 9,減薬用法を計画。 10,インフォームド・コンセントの適切な実施 11,離脱症状を病状の悪化とは捉えないよう留意。 12,減薬日誌 / サポート体制の確立。 13,置換薬やアルコールを避ける。ただし状況により一時的な増薬も視野に入れる。 14,離脱症状が落ち着くまでには相当時間がかかる場合がある事を理解する。 15, 薬剤性フラッシュバックへの対策 ⑲処方変更を受ける患者の看護 まず、製薬会社のいっていることを言ってみますね。 『 抗精神病薬は、十分な効果が出てくるまで少なくとも二週間は必要です。時には、一ヶ月くらいしてやっと効果が出てくることもあります。 一方で、だるさや立ちくらみなどの副作用は、服用してすぐに現れます。しっかりと服用して、効果が出てくるまで待っていただけるよう、この間は看護師のサポートが大切になってきます。 また、薬が増えたり変更になったりすることもあると思いますが、その時一時的に症状が悪化したり、お薬が減ることで離脱症状が出たり、新しいお薬による副作用が見られたりすることがあります。こういった「変化」は、患者さんにあったお薬を見つける上でとても貴重な情報になります。気付いたことは何でも、患者さんから伝えてもらって下さい。そして、主治医や看護師・薬剤師で情報を共有していきましょう。 看護師にしか出来ないことがあります。それぞれが得意分野を活かして、患者さんのためによりよい医療を目指していきましょう。 』 まず、5つの神経ホルモンについてと、薬剤プロフィールについての、2つの資料は手元にありますか。 この2つを比べて、どんな症状が出るか予測してみましょう。 例えば・・ ORZ→ARP=H,M離脱に注意 SNRI→SSRI=a離脱に注意 BZD→ベルソムラなど=BZD離脱に注意 ※BZDの減薬は最近多い BZDはお手元の資料にはありませんが、スライドには34枚目にあります。 GABA↑(賦活)⇒入眠、筋弛緩、脱抑制 GABA↓(遮断)⇒不眠、緊張、不安 というものですね。 これらの症状を看護していきましょう。 ( D離脱) 笑いや運動、深呼吸 ↓ セロトニン濃度を高める ↓ 過剰なドパミンを抑制 ↓ 興奮を鎮める 神経ホルモンにはこんなシーソーがありましたね。 なので笑いや運動、深呼吸でセロトニン濃度を高めると、過剰なドパミンを抑制し、興奮を鎮めることができるんですね。 攻撃性( HT離脱) 興味、趣味、恋愛 ↓ ドーパミン濃度を高める ↓ 過剰なセロトニンを一時的に中和 ↓ 攻撃性を鎮める 不安,恐怖,緊張( a離脱) 興味、趣味、恋愛 ↓ ドーパミン濃度を高める ↓ (ストレスホルモン)ノルアドレナリンを一時的に中和 ↓ 不安、恐怖の軽減 不眠 (H ・HT離脱など) 朝日を浴びる ↓ 松果体のメラトニン分泌リズムを調整 ↓ 良眠へ導く 不眠 (H ・HT離脱など) 日中の運動 ↓ 交感神経優位 ↓ 夜間副交感神経優位に ↓ 良眠 ※うつ状態は脳血流低下が原因という説もある 運動で改善の可能性 消化管異常、食欲低下( M離脱) 興味、趣味、恋愛 ↓ ドーパミン濃度を高める ↓ 過剰なムスカリンを一時的に中和 ↓ 食欲改善 論理的な話をしましたが、一番は個別性のあるケアです。先ずは本人、家族の話を聞いて、環境や社会背景を確認してください。 ⑳抗不安薬を減断薬する患者の看護 離脱者・Ns・Drの心構え ①心構え 【ベンゾ系/AL離脱者の方】 ・精神症状対策の基本  減・断薬のタイミングは専門家と共に慎重な判断をする事が重要です。そして、離脱の際は常に第三者的視点で症状を観察する事を大事にして下さい。症状の推移は必ず記録し、漸減指導医と情報を共有して下さい。離脱で起きている精神症状を自分のものとして認識してしまうと、エンドレスな恐怖感に繋がり、ますます辛くなります。ネガティブ思考は全て離脱のせいと割り切り、自分を破滅させるような絶望的な思考は中断するように心がけて下さい。  イライラ・焦燥感は自傷・他害の恐れがありますので、他者との接点を避けながら安全な場所でサポートしてくれる人と過ごせる環境作りが重要です。記憶障害により、火の消し忘れ・鍵の閉め忘れ等が起こるケースがありますので、それらを確実に防げる安全策を整えて下さい。原疾患への予防策(環境を変える、カウンセラーを探す、代替療法等)を漸減前にあらかじめリサーチ・準備しておかれると、離脱後の生活がよりスムーズになる事と思います。 ・身体症状対策の基本  離脱では多岐に渡り様々な身体症状が起こります。一時的に、健康であった頃とは全く比較にならないような酷い状態となってしまうケースもあります。先ずは栄養バランスに留意し、体に優しい生活を心がけて下さい。代替療法に関する知識を持たれる事も大きな助けとなるでしょう。 【Nsへ】 ・精神症状対策の基本  離脱者の方は記憶障害によりすぐにあらゆる事を忘れてしまいがちなので、何度も繰り返し励まして下さい。エンドレスで絶望的な道程に見えるかも知れませんが、必ず状態は改善します。「本当は怠けているんじゃないの?」「気分転換すれば何とかなるよ」等の声かけは、離脱者の苦しみに追い討ちをかけてしまいますので留意が必要です。思考力も落ちるので、何かを問い掛ける際にはイエスかノーかで離脱者が答えられる提案型の文体がベターです。  離脱症状は時には大変強い心身の苦痛を引き起こしますが、経験をなさっていない方にはその共感・理解が難しい局面があるかも知れません。ですが、時間が経過するにつれ症状の程度は軽快していきますので、忍耐強い励ましと理解を持って支えてあげて下さい。離脱症状対策に関する情報収集、漸減計画の把握等のサポートも大きな助けとなります。 ・身体症状対策の基本  毎日の生活のリズムを規則正しく、栄養バランスの良い食事が摂れる様に配慮して下さい。また 、離脱者の調子が良い時は、軽い運動や筋肉のストレッチが出来るよう励まして下さい。不眠が出た場合は、先ずは本人の体が休めるようにして下さい。減・断薬時には頚椎周囲の筋肉に激しい強張りが出るケースが多く、マッサージ等も効果的です。 【ドクターの方へ】 ・精神症状対策の基本  離脱者の方は一過性の記憶障害によりすぐにあらゆる事を忘れてしまいがちなので、繰り返しの励ましは大きな効果があります。断薬から離脱症状が落ち着くまでには数ヶ月~数年を要するケースが多く、その間は原疾患と離脱症状の区別の難しさに悩まれているドクターも多いというのが現状です(※諸外国事例)。離脱者の症状には数カ月、数年単位での長期的な観察を行った際に、徐々に軽快していくというパターンがあります。  尚、離脱者の方は「その症状はあなたの元々の疾患です」という言葉を最も恐れており、減・断薬を成功させる為には留意が必要です。強い希死念慮・深刻な鬱症状を呈した場合は、漸減が急激過ぎる恐れがあり、海外の専門クリニックでは置換法への方針転換、減薬ペースの見直し等の対応がされています。 ・身体症状対策の基本  血糖値の異常、痙攣、意識混濁、血圧の異常、頻脈等、強い身体症状の訴えがあった場合は、服薬以前の既往症を確認の上、適切な対処を必要とするケースがあります。これら離脱性の身体症状が激しい場合は、漸減が急激過ぎた可能性があり、漸減ペースの見直しを含めた専門的なケアが離脱者の苦痛を軽減します。離脱では身体の異常を訴えた場合でも検査結果は良好なケースが多くあります。ただし実際の離脱者の苦しみは相当なものですから、専門家の理解ある対応が非常に大きなサポートとなります。 【カウンセラーの方へ】 ・精神症状対策の基本  漸減中・断薬後の一定期間では様々な精神病様の症状が現れます。離脱者の方は「元々の自分の精神症状が悪化したのではないか」「自分はもう気が狂ってしまうのではないか」と、常に恐怖を感じている極限の状態です。何気ない言葉・アイコンタクトに対して過剰に反応するケースもありますが全て一過性のものです。常に「あなたの精神症状は離脱によるものですから、必ず楽になるので大丈夫です」と、励まして下さい。こうしたカウンセラーからの共感・理解は離脱者にとっての命綱になります。  全ての離脱者の方には服薬動機がありますので、減・断薬の判断が妥当であるのかは、断薬後に離脱症状が落ち着いてからでなければ誰にもわかりません。ですが、離脱者に断薬の意志がある限りは、専門家が最後まで励まし続ける事は大変大きな意味があります。  元々離脱者の方が抱えている悩みに対しては、症状が穏やかな折々で徐々に取り組んでいく事が可能です。離脱症状は離脱者の人格を脈絡が無い状態に(主にネガティブな方向に)一時的に変えてしまう上に認知・記憶の混乱を引き起こすので、当人の考えは頻繁に変わるかも知れません。ですが、早急なジャッジメントはせずに離脱者の状態を長期的に観察してみて下さい。回復につれて徐々に離脱者は自身の性格を思い出し、解決すべき課題も見つけて行く事が出来ます。離脱症状の厳しい局面を潜り抜けた後は、ストレス耐性が服薬前よりも上がっている事に離脱者御本人が気付かれる事も多いです。 ②離脱症状対策 ☆不眠で交感神経優位となると、リンパ球減少をきたし、疾患の回復も遅れる。 副交感神経優位にさせるケアが回復を早める。 ※個々の体質によってこれらの有効性は異なります。是非御自身に合った対策を探してみて下さい ・自律訓練法  リラックス効果 パニック発作予防など ・アロマテラピー  リラックス効果 火照り、感染症、パニック発作予防など ・認知療法・認知行動療法  離脱の鬱症状で起こる認知の歪み、強迫観念の緩和 原疾患対策など ・鍼灸  リラックス効果 離脱症状全般の緩和など ・散歩  リラックス効果 リフレッシュ効果 イライラ時の気分転換など ・水泳  リフレッシュ効果、身体症状全般の緩和など ・栄養療法 糖質制限  離脱症状全般の緩和 原疾患対策など ・マッサージ  リラックス効果 筋肉の症状の緩和など ・ストレッチ  リラックス効果 筋肉の症状の緩和など ・ヨガ ピラティス  リラックス効果 筋肉の症状の緩和 バランス感覚の回復促進など ・温泉療法  リラックス効果  離脱症状全般の緩和など ・冷え対策  離脱症状全般の緩和など ・プラセンタ療法  離脱症状全般の緩和など ・漢方  離脱症状全般の緩和など ・森林浴  リラックス効果  離脱症状全般の緩和など ・瞑想  リラックス効果 精神症状の緩和など ・爪揉み療法  リラックス効果 離脱症状全般の緩和など ・お手玉  反射力 運動能力の回復など ・手芸  リラックス効果 芸術療法に期待される効果など ・楽器演奏  リラックス効果 芸術療法に期待される効果など ・描画  リラックス効果 芸術療法に期待される効果など ・クロスワードパズル  記憶力、思考力の回復促進など ・半身浴 ミストバス(よもぎ蒸し等含む)  リラックス効果 離脱症状全般の緩和など ③症状のゆり戻しについて  断薬後は回復を待つだけなのですが、ストレスフルな出来事・気候の変化(気圧・気温)・ホルモンバランスの変化などにより、一時的に回復が2歩も3歩も後退したような状態になってしまう事があります。女性の場合は生理のリズムと連動しているケースもあります。こうしたゆり戻し症状が起きる時期は、春の暖かくなる頃、台風の季節、秋から冬に推移する季節が多い様です。  頑張り続けている離脱者の方にとって、ゆり戻し時は大変辛く、ゴールが更に遠ざかってしまったような状態に絶望感を感じてしまうのですが、時間の経過と共に症状は徐々に落ち着きます。幾度となくこうしたプロセスの繰り返しを経た後、最終的に状態が安定していきます。ストレスがかかる環境はなるべく回避し、ゆり戻しの季節をあらかじめ想定・心構えをしておく事で負担を軽減できます。 ④仕事  減・断薬に取り組む方々は、その症状と職種のバランスにより仕事の継続か休職・退職かを選択しています。対人の局面が多く、対人関係での直感的な気遣いや機転が必要なポジションのケースでは業務に支障をきたしてしまうので、継続が難しいかも知れません。一方で事務職、技術職等、対人ではない業務の場合は継続が比較的可能です。断薬後中期以降、コンディションに合わせて徐々に職場復帰を進めていくのが最も無理が無い方法かも知れません。  どの様な方針を選択するにしても、先ずは周囲の理解が得られる状況である事が非常に大きなサポートとなります。 ⑤精神症状と身体症状のバランス  身体症状が強い際は精神症状が体の辛さによってマスクされる傾向があります。身体症状が弱まると精神症状が急激に強くなったような錯覚を起こすのですが、これは身体症状が楽になった事で精神症状に注意が向くようになった結果です。これも回復のプロセスですので。こうした波を繰り返しながら離脱者は回復に向かいます。  尚、離脱者の方が感じられる典型的なジレンマに「不眠のせいで心身の調子が悪いのか、離脱のせいなのかがわからない」というものがあります。実際には、離脱症状による不眠・その不眠による身体症状がループし複雑に絡み合った結果での状態なのですが、こうしたエンドレスに見える症状も離脱者を大きく不安にさせます。ですが不眠が軽快していくのに伴いその不安も自然と払拭されていきます。 ⑥対人関係について  離脱症状では人格に一時的な変化が現れます。その殆どは被害妄想、極端ないら立ちによって相手に当り散らす等、ネガティブな方向への変化です。こうした変化のおかげで、多くの離脱者の方は離脱中に人間関係に問題を抱えてしまう事があります。例えば、離脱中に友人、知人に対してしてしまった態度、発言がその関係を図らずも壊してしまい、後悔をする局面は少なくありませんし、イライラが原因で家族に暴力をふるってしまい、離婚となってしまった深刻なケースもあります。こうした事から、離脱期間中は積極的な対人関係は避けておく方がベターなケースが多いように思います。  個々の症状の程度にもよるのですが、離脱者の服薬・離脱の事実を知らない友人、知人などとのコンタクトを必要最低限にしておく事は、回復後の対人関係の再開を容易にしてくれます。もし身近で支えてくれる人に暴力を振るってしまう衝動がある場合は、別居等の対策も必要でしょう。こうした対処は一時的なものですし、離脱の精神症状から回復していくにつれ、また親しい関係を取り戻す事が出来ます。  離脱者の方は大変な苦痛の中にいる上に、対人関係ではトラブルを抱えがちであり、結果的に孤独に陥ってしまうケースが多くあります。こうした状況では周囲で見守る方々の理解と忍耐強い手助けが何よりも大きな支えとなります。 ⑦離脱成功のコツ ・離脱に適した環境づくり  ストレスの大きい環境、人間関係は避けて下さい。 ・記録をつける  離脱症状には季節・時間帯・天気・生理周期などにより規則性が認められる事が多くあります。記録は離脱を計画的に進める際に役立ちますし、症状が一時的に悪化した場合でも離脱のパターン把握ができていれば慌てずに対処ができます。 ・焦らない  薬は減らしていけばいつかは0に出来ます。焦らず御自身のペースで日常生活を送りながら徐々に減らしていきましょう。漸減指導医との綿密な連係が大きなサポートになります。 ・サポートを沢山探す  漸減指導経験の豊富なドクター、カウンセラー、漢方専門医、家族・友人、自助グループ、インターネットでの支え会い等、少しでも多くのサポートを探してみて下さい。 ・生命に関わる事以外は全て後回しにする 離脱症状が続いている間は判断力が鈍り人格も変わっています。命に関わる重要な事だけに留意し、それ以外は二の次と考え回復のペースに合わせて思索・判断をするようにして下さい。 ・自身の人生の大勢に関わる重要な決定はしない  離脱症状が続いている間は、人生の根幹に関わる重要な決断は必ず回避して下さい。ただし複雑な家族関係、近所付き合いを避ける為の引っ越し等、離脱中の負担軽減に向けた決断は例外です。 ・栄養のバランスを整える  人間の栄養状態と精神は非常に深く関わっています。バランスの良い食習慣を心掛けてください。腸内環境の改善、また、栄養療法に詳しいドクターの意見・著作は助けになる事と思います。 ・将来の事・過去の事は考えない  離脱の間は絶望的な考えが浮かびがちですので、日々の目先の事のみ考え、その他の思索は避けた方が負担が少ないでしょう。先ずはその日の時間を一歩一歩着実に過ごす事に集中して下さい。 ・調べ過ぎない  離脱中はネガティブな情報に吸い寄せられやすく、自身の症状を調べ過ぎる事で不安になりがちです。その結果として離脱症状が強くなる傾向があります。先ずは減、断薬という目標のみを念頭に置き、その障害となる過剰な情報は封印しておく事も重要です。 ・重要なライフイベントがある際は漸減のペース見直しを  不可避の重要なライフイベントがある際は漸減ペースをそれに合わせて調整する事で対応が可能です。漸減は必ず計画通りにしなければいけないというものではありませんので、指導医と相談の上、柔軟な姿勢で臨んで下さい。 ⑧離脱者の方へ5つの覚え書き  離脱を堪え難いと思った時、くじけそうになった時に読み返してみて下さい ・今の症状は永遠には続かない。 ・今の症状は離脱症状なので深く考えない。 ・ネガティブな考えは中断し、棚上げする。 ・今の自分はちょっとした不安、気掛かりが何百倍にも増幅されてしまう状態。 ・いずれ必ずホッとした気分、暖かい安心した気分を感じられるようになる。 離脱症状のステージ1 漸減中 ・・・個々の体質、服用期間、環境、及び薬物それぞれの力価、持続時間により症状の程度に違いがあるが、この期間に離脱症状を起こすことは稀ではない。処方薬が短時間作用型の場合は減薬から数日以内、中・長時間作用型の場合は1週間後~3週間以内に最も症状が強くなるケースが多いようだ。この際に起こる精神症状により離脱者は「気が狂った」「もう2度と普通には戻れないかもしれない」「これは私のもともとの精神症状だ」と、思い込んでしまいがち。同時に、さまざまな身体症状が起こる。離脱者は健康な人からは想像が難しいほどの大きな苦痛に苦しんでいる。離脱の精神症状は気分転換をしてもすぐには回復しないので、「今は脳が勝手に辛さを感じさせているだけ、いずれ必ず楽になるから大丈夫」と声をかけてあげることが大事。離脱者自身は離脱の精神症状によりポジティブな感情を感じられない状態なので、励ましに対する反応は良いものではないかもしれないが、周囲からの回復への確信がある態度と理解がとても重要である。 離脱症状のステージ2 断薬後初期 ・・・比較的強い離脱症状が現れる時期。薬を断ったのにもかかわらず、さまざまな身体症状・精神症状が現れるため、離脱者がもっとも不安になり、自信を失う期間である。情緒・記憶にもまだ多くの一時的障害があり、発言・行動にも一貫性がなく、不安・焦燥感・イライラが非常に強い。断薬後初期のこの段階は、再服薬のリスクがあるので、現状からは必ず回復していくことが繰り返し伝えて、励ますことが大事。絶望的な考えが浮かびやすいし、そういう考えに支配されがちだが、すべての絶望的な思考は中断しよう。希死念慮・うつの症状が強い場合は注意が必要である。この時期には、離婚・退職などライフスタイルの変化を希望する気持ちが起こってくる場合があるが、人生に大きくかかわる決断は、症状が緩やかになるまで棚上げしておいたほうがよい。まずはコンディションに合わせ、できることは行い、できないことは行わないスタンスを保とう。 離脱症状のステージ3 断薬後中期 ・・・心がふっと楽になる瞬間が徐々に実感できるようになる。ただし、まだ安定はせず、苦痛の期間のほうが多い状態。強迫的な不安やうつ、強烈な中途覚醒や不眠などの症状がなかなかフェードアウトせずに焦燥感が募る時期でもある。思考・記憶力が徐々に回復してきている分、ネガティブなことに対して以前よりも具体的な想像をしてしまう。調子が良い時間と悪い時間の落差が大きく、ステージ2よりも主観的な苦痛が大きい状態である。身体症状にも長い間耐え続けているので、その疲労が出る時期でもある。あまりに長い苦しみに離脱者はエンドレスの恐怖を覚えるかもしれないが、実際には順調に回復しているプロセスなので、それを繰り返し言い聞かせて自分を励ますことが大事。えんえんと続く離脱の孤独感により、引っ越し・結婚・出産などを検討する傾向があるが、まだ人生の大きな決断は時期尚早であるので、慎重になったほうがよい。  離脱症状のステージ4 断薬後後期 ・・・精神的に楽な時間が増え、睡眠も徐々に安定し、体もそれまでよりも楽になっていく。可能なら、適度な運動を取り入れて、無理のない体力づくりを心がけよう。離脱の精神症状と離脱者自身の感情との区別がつかず、それまでとは異なった不安定な感情を抱きがちな時期なので、その混乱を整理できるよう周囲のサポートがあるとよい。この時期は離脱者が服薬前に自身が持っていた内的・外的な問題と対峙し始める時期であり、その作業に対する怖れの感情が起こりがちな時期である。離脱性の不安とない交ぜになって不安定な状態になりやすいので、まだ深く物事を考えすぎないように気をつける必要がある。離脱者は棚上げにしてきた問題に性急に取り組もうとしがちだが、まずはコンディションに合わせてゆっくり進めていこう。 離脱症状のステージ5 回復 ・・・日常生活を心から楽しめるようになり、自分の思考・感情が明確にわかるようになる。この頃には自尊心も回復している。この状態になると離脱者が取り組みたい人生の課題が自然と明らかになる。離脱者自身の力で対処できる場合は周囲はそれを励まし見守ってあげよう。それが難しいケースの場合は、状況に合わせたサポート体制を整えることが大事。 警告:安易に多量の薬物を減らすべきではない。また、服用期間が長い場合もQOLを加味すると安易に断薬はするべきでない(禁断症状が服用期間と同じ期間続くため)。 引用 ドクター・患者さん・御家族・カウンセラーのための向精神薬の減薬・断薬メンタルサポートハンドブック Dr常葉まり子 ㉑嗜好品の注意 たばこ タバコのニコチンがアセチルコリン受容体を刺激し、アセチルコリンを減少させようとするホメオスタシスにより、ドパミンが生成、ドパミンを減少させようとするホメオスタシスにより、セロトニンが生成。通常アセチルコリンはすぐ消失するが、ニコチンは消失しないので、ドパミン、セロトニンが多量分泌される。 ↓ 抗精神病薬の効果を減少させる                                        コーヒー、紅茶、緑茶 カフェインはドパミンとアドレナリンを分泌させる ↓ ベンゾジアゼピンの効果を減少させる SSRIの作用を増強させる グレープフルーツ フラノクマリンという成分が3~4日体内に残りCYP3A4の代謝を阻害。ジュースやジャムでも注意。ブンタン、スイーティー、晩白柚、夏ミカン、ポンカン、伊予かん、はっさく、きんかんにも含まれる。 ↓ CYP3A4酵素で代謝されるベンゾジアゼピン、カルバマゼピンなどの作用が増強される ㉒事例検討  魂を救う 私たちの目標は、患者さんの魂を救うことではないでしょうか。  安易に多量の薬物を減らすべきではありません。また、服用期間が長い場合、安易に断薬はするべきではありません。   本スライドの内容は、あくまで情報提供を目的としており、その効果を保証するものではありません。  各自、確認の上、自己責任の上ご活用下さい。 ご清聴ありがとうございました