「活き活きとした記録」を日常に――患者に寄り添う記録と在宅部門との情報共有の推進 3病棟では、短期~中期看護計画に沿った活き活きとした日々の記録を目指す目標が掲げられた。私はこの目標に呼応し、業務効率の向上と在宅部門との連携強化に資する具体的な方法として「詰所外での記録」と「在宅部門との記録共有(年間3件以上)」を個人目標として設定した。 ここでいう「活き活きとした記録」とは、患者個々の生活や思いに焦点を当て、単なる経過記録ではなく、その人らしさを捉えたケアにつながるような、表情のある記録である。また、「記録共有」とは、院内に限らず、訪問看護等の在宅部門とも適切に情報を連携し、切れ目のない支援を実現する仕組みである。 果たして、記録をよりリアルタイムで、しかも他職種間で共有可能なものとすることは、本当に業務効率の向上や連携強化に有効なのだろうか。 確かに、記録は詰所でまとめて行う方が集中でき、作業時間の短縮になることもある。しかし、その間、患者の表情の変化や小さな訴えを見逃してしまうリスクがある。また、記録が他職種と共有されなければ、退院後のケアに活かされにくい。 以前、退院前カンファレンスで「在宅での生活がイメージできない」という訪問看護師の声があった。記録内容に日々の生活行動や本人の表情、希望が十分に記されていなかったため、必要な支援内容の検討に時間を要した。 記録は単なる業務の一部ではなく、ケアの質を高める手段として位置づけるべきである。そして、それは「書く人だけのもの」ではなく、「チームで活かすためのもの」であるべきだ。 この問題を解決する方法として、私は「患者のそばで記録を行うこと」と「在宅部門との記録共有を年間3件以上行うこと」の2点を掲げた。これにより、記録のリアリティと共有性を同時に高め、業務効率と連携強化を両立させたい。 「井口野間病院マニュアル(MOM)3病棟 業務マニュアル Ver.1 p.6 4-3 昼当番」に「基本廊下での見守り、各部屋巡回を行う」と示されている。 xナラティブ・ベースド・プラクティス(NBP)の研究によれば、「生活の中の記録」がチーム内の意思決定の質を向上させるとされている。また、「記録は“行為”を未来へつなぐ対話である」(教育学者ドナルド・ショーン)という言葉も、記録の意味を再考させられる示唆である。 ただし、詰所外での記録には個人情報の取り扱いのリスクが伴い、ICT機器の活用や周囲への配慮が不可欠である。また、記録共有には時間的負担や、共有方法の明確化と調整が必要になる。記録様式の統一や手順の明文化も併せて検討すべきである。 結論として、記録を患者のそばで行い、在宅部門とも共有することは、活き活きとした記録文化を根付かせ、ケアの質とチーム連携の強化に貢献すると考える。日々の記録を単なる“記述”ではなく、“共有される実践知”へと高めていきたい。 3病棟 看護師 牛根